長編(幸村・謙也)

□ヘタレ2
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「嫌や!俺は嫌いじゃない!」

「…なんで…っ。嫌いやろ!?せやったら変な気使わずにちゃんとはっきり言って?…そしたら謙也への気持ちも吹っ切れて東京にも行きやすい」
テーブルには名前の涙の水溜まりが出来てる。
テーブルの上で固く握っている手には俺があげた指輪が光ってる。
「…だって謙也…うちがお返しにあげた指輪…つけてる?」

「…つけてない」
万が一無くなったら嫌やから、部屋に大事に置いてある。

「やっぱり。…だって謙也がつけてるの見たことないもん!…渡した時もリアクション薄かったし…嬉しく無かったんやろ?」
薄かったんは普通に嬉しすぎて声にならんかったから。

「そんな事ない」

「じゃあなんで一緒にいる時にうちの顔見てくれないん?」

「それは…」
名前といるとドキドキが止まらんし。赤い顔見られたくなくて。
「なんで話す時に目、みないん?」
緊張してまうから。

「なんで手、繋いでくれないん?…いっつもうちからやん!」

「キスもしてくれないし、メールだってくれない!デートにだって誘ってくれない!うちが白石とか財前の話してもヤキモチ焼いてくれない!目の前で千歳の腕に抱き付いても何もいわない!…好きって言ってくれない……。」

「それは…!理由が…」

「理由って何よ?」

「…恥ずかしいねん」

「なんで!?うちら付き合ってんねんで?…恥ずかしくないやん。…それにうちと居っても笑ってくれへんし。…他の女の子と謙也が楽しそうに話して笑ってんの見て何回、泣いたと思う!?」

「…つ!」
俺、そんなに名前を傷つけてたん?何回も泣いたん?
俺のせいで…。
もう名前は泣きすぎて目が赤い。



「なんで謙也はうちとつきあってんねやろ?って…毎日おもう」
名前は鞄からハンカチを出してゴシゴシと涙を拭いている。



「侑士くん…おるやん?東京に行く話、したらな…嬉しいって言ってくれてん」

「おん…」

「でな、なんでって聞いたら侑士くんなんて言ったと思う?」

「分からん…」
名前は俺に質問した時、ずっと指輪を見つめていた。

「"俺は名前ちゃんが好きやねん。謙也には悪いけど。小さい身長も頑張り屋さんなんも可愛い顔も全部が好き"やって。侑士くん…格好いいよね」

「…ホンマか、それ?」

「信じられないけど本当だよ。…もしさぁ、謙也がうちの事を好きなら…さ。今ここでキスして?あと一回、指輪もかえす。好きじゃないなら目の前で電話帳からうちの名前をけして…で、侑士くんに名前はあげるっていって?」
スルリと指輪を取って俺の前におく名前。
相変わらず目を合わせれなくて俯いたままの俺。
正直名前からの告白には驚いた。まさか侑士が名前を……。
確かに侑士がコッチに来た時も凄い喜んで名前と話してたけど、好きやったなんて知らんかった。…侑士なら言い過ぎな位に自分の気持ちを伝えれるやろうし。
好きっていって手を繋いで。
…キスして。自分からデートに誘って…。名前を心配させる事はしないやろう。
俺と違って泣かせる事もないやろ。俺じゃなくて侑士と付き合った方が名前は幸せになれるんちゃうん。
今、俺が名前に指輪をはめてキスしても名前とは遠距離恋愛やろ。距離ができたら気持ちも伝えにくいし会いにくい。
…不安にさせてまうやん。
俺が名前と付き合って幸せになれるん?
俺は侑士に名前を渡したくない。本気で名前が好きやし。
そりゃあ、好きとかは言えて無いけどこの気持ちは嘘じゃない。

「名前は俺と付き合って幸せになれるん?」

「謙也がうちを好きなんやったら。…彼氏の役目をしてくれたら」

普通ならここで、カッコ良くキメるんやろな。
俺と正反対でモテてカッコエエやつは。
でも、俺はそんな事できへん。

「ゴメン、俺、どうしたら良いか分からん」

「…謙也はうちの事好きなん?」

「うん」

「もし侑士くんと付き合ったら嫌?」

「めっちゃ嫌や。俺が一番名前を好きって感情でみてる。…せやけど俺が一番名前を泣かせてる」
ホンマにどうしたらエエンや。







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