短編、中編

□幸せは俺達から贈る
2ページ/4ページ







まずは、プレゼントを決めないと。
名字って何で喜ぶやろ。
名字はハマったものにはどこまでも深くはいり込むからなぁ。
今は、星座とギリシャ神話にハマってるみたいや。
せやったら星系?

…プレゼントをしにくい趣味や。




悩んでるうちに月日は流れていき、一週間がたった。
どうやら財前は決まったらしい。どんなプレゼントか聞いても、謙也さんがパクったら嫌なんで教えないって言いよる。
なんやねん!先輩やぞ!!




「それってさ、名字の趣味に合わせた?」

『せやから謙也さんには言いませんて』

「ケチやな。」
嫌な顔をして睨めば、足を蹴られた。

『ヘタレよりましッスわ』


毎度、毎度の事やけど財前は酷い。


「何話してんの?」

「『!?』」

「なんやの2人してうちが話しかけたら驚くって!」
ムスッとした顔ですら可愛い。

『考え事してたんスわ』

「大事な事をなっ!」

「大事な事って何?なんかあんの?」

『名前に話すような事ちゃうから』

「なんでよ!秘密はなしやろ?それにうちだって子供じゃないから秘密は守れるで?」

『ちゃうんスわ。名前に秘密にしてるんとちゃうくてどうでも良いから言わへんねん』

「でもさっき謙也は大事な事って…?」

『(クソヘタレが)』


「…なんで教えてくれないん?」上目遣いでそんな事いわれたら、言ってまいそう。

『…今はまだ言えへん。せやからもうちょっと待ってな?』

「…うん。財前がそう言うなら待っとく」

『ありがと』
爽やかに笑って名前の頭を撫でる。
名前は照れたみたいに赤面してうつむく。

『カワエエな名前』

「……////」

「おい、そこ!!なにイチャツいてんねん!」

『ええやないですか』

「よくないわ!!」
…ほんま財前は目はなすと、すぐ名字を口説くから…。
俺には冷たいし、ツンツンしてんのに名字には甘いしデレデレしやがって。
なんやねん。
二重人格か。









段々と俺らの計画も綺麗に整ってきた。


しかしまだ俺はプレゼントを決められていない。

名前が喜びそうなもんが思い浮かばへん。

……どないしよ。


あと三週間しかない。
2つあった選択肢からちゃんと一つにきめた。
名字へのサプライズ。

それは、名字を呼び出して飾り付けをした俺の家に招待する事。

もともと誕生日には触れずに知らないフリをする。
そして流れで俺の部屋に来させる。
部屋に入ったらクラッカー。
キラキラな飾り付け。



これで大丈夫やろ。



あと、心配すべき事はこの計画が名字にバレないようにすると言う事と、白石や千歳にバレてしまわないようにする。


なんでバレたらアカンかと言うと名字の方は分かるやろ?
サプライズやねんから。

白石達のはやかましくなるから。


って言うのは建て前で。

本音はこれ以上名字が男に好かれないようにする事。
…出来れば俺ひとりで独占したい名字。
でも財前だってそうや。
だから俺らは2人で祝う。
それだけですら嫌やのに白石もきたら俺が名字を独占する時間がへる。




そのために秘密にしなければ。






名字の誕生日まであと1週間。









「……」
体育の授業。
考え事をしながら、運動してた。
残念な事に男女は別。

名字なにしてるやろーってふいに見たら、顔色が悪かった。
大丈夫か?



そう思った矢先、名字は倒れた。



「名字っっ!!!!!」

全速力で名字の所にいく。周りの女子が名字を心配して集まった。
その中に潜り込む。

「名前ちゃん大丈夫!?」

「頭揺らしたらアカン!!」

「え…?」

「なんで倒れてるか分からんから頭は揺らしたらアカンねや。頭に関係する事やったらどうすんねん!」

名字を抱きかかえる。
「よいしょっ」

「先生に言っといて。俺が名字を保健室に運びに行ったって」
名字をお姫様だっこして、出来るだけ体が揺れないようにし、保健室まで走った。
もし名字に何かあったら。
重い病気やったらどうしよう。
……入院なんてしたらどうしよう。


俺の中に不安の感情が駆け巡る。
不安は体内で暴れまくり鼓動を早ませる。



…なんかあったら一生俺が名字を守る。







「先生っ!!」
勢いよくあけた保健室のドア。
聞こえるのは自分の声と自分の鼓動だけ。


先生の返事は帰って来なかった。




「…先生、居てないんですか?」



何ひとつ音がしない。


どないしよ。
…先生おらんやん。


こういう時ってどうすんの?






…とりあえず名字を寝かせないとアカンな。

ゆっくりベッドに寝かせた。
鎖骨あたりまで掛け布団をあげる。


「熱はかった方が良い?」

「そうした方が良いよな…」
自問自答の結果、俺は熱をはかる事にした。



体温計を手に取りひとつ問題に気づく。


…俺がはからないとアカン。
という事は名字のわきに《俺》が体温計をさすっちゅー事や。
そうなったら、俺が名字の服を脱がさないとアカン。




無理。






ムリ。






むり。



ぜっっったい無理。
色々アカン。





出来るわけないやん。
好きな女の子の服を俺がぬがす!?
なんの罰ゲームや。


…いや、嬉しいよ?

嬉しいけど、そう言うのって違うやんか…


善意の行為でも寝てる間とか意識が無いときはしたらアカンやろ。


どうしたらええねん。


でもコレって俺の羞恥心なんて捨てて、熱はからあかんよな。

それが最善やんな……。




あぁ、もうっっ!!!!!

煩悩は捨てな!!




「色即是空!」
銀の真似をして俺は気合い
をいれた。

「すまんな、名字」
体操服は脱がしにくい。
まだ制服の方がファスナーやしやりやすかったわ。


できるだけ見ないように半目になった。

脇に挟む。




…あとは鳴るまで色即是空や。

名字から目をそらして時間の経過を待つ。



まだか。
早よ。
頼むって。
早よ。
鳴れや。
早よ。
遅い。
早よ。
限界や。
俺は限界や。
早よ鳴れ。
お願いや。
早よ鳴れ!!



俺の足は上下に激しく動いていた。
…貧乏揺すりっちゅー話や。


世界で一番苦手な、待ち時間。
それを今体感なう。


あと5秒しても鳴らなければ俺は崩壊や。



1、



「っだぁっ!」

5秒すら我慢できなくて後ろを向けば名字。

視界には名字の白い肌。
つか胸。



スマン!!
心でさけんだ。
俺が不甲斐ないばかりに裸(に等しい姿)を見てしまった。



色即是空。

数え切れないくらい唱えたらやっと機械音が聞こえた。


よし。来た。


半目で体温計を抜けば熱は36℃

…普通やんな。

たしか名字の平温は35℃。
それから考えれば少し高いが倒れるほどではない。




「色即是空」
再び半目で服を整えた。
…先生が来るまでか、名字が起きるまで待っとくべきやんな。

パイプイスを取り出して名字の隣に腰掛けた。


「大丈夫か?」

「……」
返事はない。
当たり前か。


名字、可愛いな。


ゆっくり頭をなでる。
サラサラやん。


あー好きやなぁ。


俺のになって欲しいわ。








.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ