短編、中編

□赤い莓
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後ろの正面だぁれ?







―丸井ブン太―




友達と怖い話をしている時に突然肩をたたかれた。
「っ!?!?!?」
声にならない悲鳴を出して振り返れば丸井くんがいた。

「そんなに驚くなよぃ。安心しろよ」

「なんだぁ…丸井くんか。驚いたじゃん」
怖い話をしている時にたたかれたら驚くに決まっている。
…冷や汗かいたし。

「なんだって何だ?」

「驚かさないでよね」

「何だってなんだよ!!!!!」
物凄い速さで丸井くんに殴られた。頬がイタイ。
骨が崩れる音がした。












「っ!!」
……なんて目覚めが悪いんだ。

私は丸井くんに殴られる夢を見て起きた。


その夢で私は酷く殴られて骨が陥没していた。

しかしその後、丸井くんはこう言ったのだ。



「ごめん…俺は名前の事本当に好きなんだ…。でも殴ってしまう……。ごめん」
そうやって謝り続けた。



「名前、愛してる」
傷ついた私の体を優しく撫でてくれた丸井くん。



そんな不思議な夢を見た。

腕を伸ばしてストレッチをする。首を回せば骨がなる。

こってるのかな…?


ゆっくり立ち上がろうとしたら、足首に痛みが走った。


―ズキン―

「いたっ!」
痛みで私はもう一度すわりこんでしまう。
ふと足首をみると包帯が巻いてあった。
あれ…?怪我してたっけ?
記憶にない。
寝ぼけてたのかな。



不思議に思いながらも包帯を取ってみた。



「え…」
思わず間抜けな声がでる。


私の足首はナイフで切られたように5pくらいの傷が出来ていた。
そこまで傷は深くない。
浅く切れている。

でもどうして?

切った覚えも切られた覚えも切れた覚えすらもない。


それに血はでていない。

傷の手当ては完璧にすんでいる。私が寝ぼけてたとは一層思え無くなった。




じゃあ誰が?
お母さん…?

私は真相を知るために部屋をでる。



だけど私は呆然とする事になった。

ドアをあけて広がる世界は、初めてみた空間だった。

部屋は私の部屋だったのに。
そこから先はまるで他人の家だった。

恐る恐る階段をおりると、赤い髪の毛が目にはいった。


私が知っている赤髪って。
珍しい赤髪を何人も知って訳がない。

じゃあ、、






「よう、起きたか?」

「なんで丸井くんが…」
率直な疑問が口をついて、でた。

「なんでって」
…駄目。言わないで。
質問はしたけど薄々気づいていた。
部屋の外にでた時からにおっていた甘い香り。
だけどそれを確信にするのが嫌でわからないフリをしていたのに。

「ここ、俺の家。」
……。
分からないふりしたのに。
分かりたくなかったのに。

やっぱり。
丸井くんの家だった。


「あ、間違えた。俺達の家だから」
ふと疑問に思った。
俺達って…?
私の思考がわかったみたいに
丸井くんは
「俺と名前のじゃん」
ってウィンクをした。

いつもならこのウィンクを格好いいとか思うんだろうか。
女子達はキャーッて叫ぶのだろうか。
けど。
だけど私にはただただ不快に感じた。
身の毛もよだつ、そんな感じがしたんだ。

「…じゃあなんで私の部屋があったの?」
私は俺達のって所を無視して話をした。

「あれはお前の部屋じゃないぜ。」
でも…。
完全に私の部屋だった。
部屋の大きさ、インテリア、配置までもが。

「あそこは俺の部屋」

「一番落ち着ける、空間」

「………」
私が黙り込んでいたら丸井くんが口をひらいた。

「まぁ驚くのも仕方ないよなぁ。だって俺が名前の部屋にはいって何枚も写真とって、全部同じ家具かって同じ配置にしたからな。」

「なんで…?」

「お前、質問多過ぎ。簡単だろぃ?」



「名前を愛してるから」
抱きしめる丸井くんの包容力は高くて、何だか全部を丸井くんに奪われそうになった。怖い。

「好きだぜぃ」
そしてキスをする。



「離して!!!」
急に恐くなった私は丸井くんを突き飛ばして急いで玄関にむかった。


「なんだよぃ?お前酷くね」
後ろから聞こえる声が怖くて、震えが止まらなかった。
私は靴をはくと玄関の鍵をあけた。

「何処行くんだ?」

「帰るの!!」
勢いよく飛び出した私。
出来るだけ遠くに逃げないと。
幸いにこの場所は知っている。
私の家の近くだ。
だけど家に帰ったってすぐ気づかれる。
友達の家に助けを求めよう。







「名前はどこに逃げたって、結局は俺の所に帰ってくるんだからな」
俺は自室に戻った。
タンスからさっきまで名前が身につけていた下着をとりだした。
それは名前が寝ている時にはいだ物だ。
しかし何も履かせないとバレてしまうため同じものを探してつけさせている。
「はぁっ、名前……」
名前のパンツを手に取りながら自身を上下に扱く。

「もっと締め付けろよぃ」
自分の手でキツくにぎると先から液があふれだした。

「まじ名前、天才的ぃ」
ブン太はオーガズムを迎えた。








「名前〜、どこにインだよぃ」
リビングまでパソコンを持っていき電源をいれた。

「パソコンは目に良くないんだぜ?名前」
ブルーベリーのジュースを透明なコップにいれる。
そこにストローをさす。

「準備完了。」


ブン太がいじるパソコンに表示されるのはこのあたりの地図。
それと名前の顔のアイコン。

そう、今ブン太がみているのはGPS。

それは名前の居場所がすぐに分かるもの。

そのチップは名前の足首に埋め込んでいる。

だからどこに行こうと俺の所に帰ってくる。


「な、名前」








「っ」
急に寒気がした。
背中がゾクリとして腕には鳥肌がたつ。

「気持ち悪いなぁ」

私が急いで逃げた先は近くのいとこの家。
友達の家にしようと思ったけど、丸井くんにはバレそうだったから。

いとこは何事だって顔してたけど、丸井くんの事なんて言える訳がない。










「名前〜名前〜」
気持ちよく鼻歌を歌って、靴ひもを結ぶ。

「これから行くから待ってろよ」
背伸びをして気合いをいれる。
清々しい気分で家をでた。

ブン太は斜めがけの黒いカバンにタブレット機器をいれている。
大きさは地図を見るのに最適なもの。



んー今は何処に居んだ?

さっきまではどこに行くか悩んでウロウロしてたけど、アイコンは同じ場所に表示されている。




その場所の近くまで行くと見覚えがあった。


「ここ、名前のいとこの家じゃん」
いずれ結婚するんだからって、事前に調べていた。
結婚したら親戚にも連絡がいるだろぃ。
ササッと行けるように何回か通ってたんだよなぁ。
良かった。早くつけるじゃん。


名前、帰ろうな。
そしたらいっぱい愛してやるから。






どうしよう。
さっきから震えが止まらない。
相変わらず、さぶいぼはおさまらないし。
まさか……。

いや、そんな。
いくら何でも丸井くんがここを分かる分けがない。



そう
やって自分を落ち着けようとしたらインターホンがなった。


出ようとするいとこに友達だって言われても入れないでねって伝えた。
そして私は押し入れに隠れた。

きっと大丈夫だって祈りながら。




いとこが対応したあとドアが閉まる音が聞こえた。
そして静かになった家。

ホッと息をはいた。


トントンってふすまを叩かれた。良いって合図かな?
出ようとして手をかけたら向こうから開けられて驚いた。
けどそこには、赤髪がいて…。


ニッコリ笑ったブン太は
「迎えにきたぜ」
そう抱きしめた。











私は今、丸井くんに手足を拘束されている。


私を縛る縄は、赤色。
白いシーツにとても栄えるんだって、丸井くんは喜々として語っていた。



丸井くんの横で寝ている私。
…寝かされているが正しいか。
きっと私の表情は無、何だろうな。
自由も、幸せも、無くなる物すらも無い私には顔の表情すらも消えたんだよ。
ただの無表情じゃなくて本当の『無』、言葉では言えないけど無理矢理説明したら笑っているけど口角はあがらず目も笑っていない、みたいな。

……のっぺらぼうになったみたいな感じかな?





「名前、何考えてんだ?」丸井くんは手をとってまるで恋人同士のように話しかけてきた。


「私ってのっぺらぼうになったのかなって」


「何言ってんだ名前、可愛いなっ!」
頭を撫でる丸井くん。
あー私、髪伸びたなぁ。
切らないと。
あ、でも丸井くんが居るから切れないか。


「名前には可愛い目があるぜ。ほら今だって俺だけを見てる」


「うん」


「名前に顔が無くなったら俺、辛い。悦ぶ顔がみれないし泣く顔も見れなくなる…そんなの絶対ヤだからな」
優しく私を包み込む丸井くん。
あれ?前にもあったな。
こんな事。
たしかその時は全てを奪われそうで怖かったんだ。

だけど今はどこか安心してしまう。
あーー末期だな。私。












いちごよりも
赤い、赤い、丸井くん。







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