この世界の片隅で

□歯車は動き出す
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静かな部屋に凛とした声が響く


『本日より五番隊に入隊することになりました、天内ベルと申します』

五番隊隊舎
その中でも滅多な事が無い限り入室を許されていない隊首室にベルは片膝を付き頭を垂れていた。 目の前には五番隊隊長 藍染惣右介 と、副隊長 雛森桃。

そう、現在は入隊の儀の真っ最中である

『至らぬ所は数々あると存じますが、精一杯尽力致しますので、どうか宜しくお願い致します』

きびきびとした、緊張に強張った声でベルは挨拶を交わす。

しばらく沈黙が続いていたが、
ふと 顔を挙げなさい と声がかかりベルは自身の隊長になった男を見つめる。

「...霊術院をたったの半年で卒業したと聞いたからどんな強者が来るのだろうかと思っていたんだけど、君みたいな可愛い子で良かったよ」

書類から目を離した藍染はその茶の瞳に彼女を写して、柔らかく、温かみに満ちた瞳で見つめた。

そう、ベルは霊術院をたったの半年で卒業したという異例児だった。
その為に他の隊からの勧誘も多く
ベルはどこに所属しようか迷っていたのだが、特に鬼道が優れているという事でこの五番隊に入隊する事が決まった。

『...半年で卒業出来たのはたまたまですので』
ベルは苦笑しながら言う

『それに、私は霊圧の高さを買われただけですので知識は皆無に等しいです。』

そう、彼女は霊術院にいた他の人と比べるとかなりの霊圧を持っていた、授業を行なっているさいに彼女が少しでも霊圧を高めるとその場にいる者達は皆、倒れてしまう程の
それを見かねた教師達は至急ベルに 斬拳走鬼 の基礎を徹底的に教え
さっさと卒業させてしまったのである。



要するに、裏を返せば霊術院を半年で卒業した、ではなく霊術院を追い出された と言ったほうが適当であるのだ。


『私は唯の脳無しです。』
きっぱり断言したベルは
その顔に少しばかりの哀しみを漏らしまた頭を垂れた。

ふと、頭に何かが乗るのを感じ顔を上げると藍染がその大きな掌で彼女の頭を優しく撫でていた。

『……?』

ベルが目を丸くしていると藍染は優しい柔らかな笑顔を彼女に向けた。

「卒業の本当の理由なんて言う下らないものは関係ないよ。
君は今まで頑張って来たんだろう?」

藍染はまるで彼女の心中を読んだかのように優しい言葉を掛けてきた。

ベルがぽかんとしていると、藍染はそのまま彼女の手を取った。

「この傷だらけの手、僕は好きだな。そう、大切なのは理由じゃない。君がどれだけ努力してきたか、なんだよ」

藍染は、彼女を慰めるかのようにほほ笑んだ。

「大丈夫だよ、ベルさん。分からない事があったらなんでも聞いて!あたしも出来る限りサポートするから、まずは自分に自信を持ってみて?ね!」

そう言う雛森の目も藍染と同様に優しく柔らかだった。


『ありがとうございます!』

私は自分ができるとびっきりの笑顔で2人を見つめた。






今にも目の前にいる2人に斬りかかりたくなる感情を押し殺し
只々
笑顔と言うなの仮面を被り続けた。
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