If I was your lover

□episode.2
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「でさ、入社5年以内も対象になるらしいよ」

「え?マジかよ。将来有望な俺らを見捨てるのか〜?」


お昼休み、同期と食堂でランチをしていると、ここでもリストラの話なった。
どうやらこの会社は本当に業績が悪く、リストラの手は若年層にまで伸びているらしい。


「まーうちらみたいな営業は大丈夫として、奏永、あんた総務課でしょ?気をつけた方がいいよ」

「へ!?」


急に振られた話、ましてや気をつけた方がいいと言われて、私は気の抜けた声を出してしまった。リストラは自分に全く縁のない話だと思っていたから。
仕事はそれなりに任されてるし、無駄もミスも少ない方だと思う。欠勤もしたことがないし、会社にとってマイナスになるようなことはしていないつもりだ。


「総務課の女子さ、仕事もしないでくっちゃべってる子たちばかりじゃん。奏永は違うって知ってるけど、もし彼女たちが目を付けられたら道連れって可能性あるよ?」

「道連れって、そんな…。でもいっぺんに人減らしたって大変なだけじゃない」

「それでもやるのがリストラだもん。ま、ないとは思うけど」

「だったら脅かさないでよ」


ちらりと圭の顔をみると、少しだけ心配そうな笑顔で返してくれた。
確かに、後ろの彼女たちはこの会社に必要ないだろうし、リストラされたとしても不思議には思わない。けれどその道連れになるのはごめんだし、有り得ないだろう。

別に、この会社に就職したかったわけじゃない。アルバイトを繰り返して、ライブばっかり行っているような娘を心配した親の強い勧めがあって就職活動をしてみた。
そうしたらここの面接に受かった。それだけのことだった。でも今は、仲良しの同期と、圭がいる。ここは、私の世界の一部だった。


「んじゃ、そろそろ戻りますか。午後もがんばろーぜ」


圭の一言でみんなが席を立つ。この後営業で外回りだと言っていた圭に、いってらっしゃいと小さく手を振り、笑顔を送った。






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