芯樹〜シンジュ〜

□『光』
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 まもり姉ちゃんは、すぐに声の主に向かって、「そんな名前じゃありません!」と言った。
「風紀委員がつまみ食…」
「ああもう、はいはい何でございましょうっ」
 そんないつものやりとりを、みんなは笑いながら見ていた。
 ――僕は、うつ向いて口の端を歪めただけだった。
「セナ?」
 鈴音が、僕の様子に気づいたが、僕は「帰るね」と言って駆け出した。
「おい、セナぁー?」
 背後から、モン太が呼ぶ声がした。
 駄目だ、今は一刻も早くここから逃げ出したかった。
 走りながら、涙が滲(にじ)んだ。
 ――これが、まさか、恋だとでも云うのか。
 まもり姉ちゃんに嫉妬するなんて、最低だ!!!
 僕がおかしいんだ、僕が異常なんだ!
 他の誰のせいでもない…僕だけが異端――。



 次の日、どうしても行く気になれず、学校を仮病で休んだ。
 母さんは怒っていたが、父さんが「そういう時期なんだよ、たまにはいいじゃないか」と言ってくれたので、母さんは渋々承諾したらしい。
 布団から出ずにゴロゴロしていると、ケータイに、まもり姉ちゃんとモン太からメールが来た。
 「何か悩みがあるなら相談…」「ゆっくり休め…」など、優しい言葉だったが、僕には響かない。
 今日一日で、忘れるんだ…。こんな感情。
 今は見つめるだけでは、もう足りない。
 触れたい、独り占めしたい。
 …でも、それがどうしてヒル魔さんなの…。
 考えても考えても、答えは出るはずもなかった。
 とりあえず、気をまぎらわすため、ゲームを始めた。
 それから眠ったり、ご飯を食べたり…。
 とにかく、学校やアメフトに関わる一切を断った。


 うとうとしていて、気がついたら夕方だった。
 今頃、みんなで僕抜きの部活をしているんだろうな。
 …僕なんか、いなくても――…
 目に涙が滲んできて、あたりがゆらゆらと霞んだ。
 その時、ケータイが鳴り、メールが入って来た。
 送信者は……
「ヒル魔さん…?」
 なんだろう、ヒル魔さんがメールなんて。怒っているんだろうか…そうだよな、学校は休んでも、部活には来いっていう人だろうし。
 怖かったが、見ない訳にはいかなかった。
 メールは、非常に簡潔で、有無を言わさぬモノだった。
 「後でお前の家に行く」
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