芯樹〜シンジュ〜
□FUCKIN’Cinderella
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「私が死んだら……この家も財産も…すべてお前のものだよ…」
「と、父さん!!」
死ぬなんて言わないでと、言うつもりだった。
だが、継母がまもりを突き飛ばしていた。
継母は、激しい形相で父親に詰め寄る。
「あんた、かいがいしく世話をしたのは誰だと思ってるんだい!財産は、私にも貰う権利がある!そうだろう?あんた!」
父親は、静かに息をひきとった。
床に座り込んで、まもりは泣いた。
だが、継母や義理の姉たちは涙を流すどころか、
「…何のために結婚したと思ってんだよ」
などと愚痴る。
「そうよ、わざわざ高い金で買ったのよ。あの、ど…」
…え?
「シッ!駄目よ、イルダ!」
ベスが、あわててイルダの口を塞いだ。
「…?」
いぶかしそうに見るまもりに、ベスはイルダの口を塞いだまま、ひきつった笑顔を返した。
継母が、咳払いをひとつした。
「ともかく、喪があけたらこの家は私の物だよ、いいね?」
突然の継母の言葉に、まもりはうろたえた。
「え…だって、父さんは…」
すると継母は、まもりの頬をピシャリとはたいて怒鳴る。
「あんたのような小娘が一家を支えられるのかい?それは、妻である私の役目だよ!!あんたは、厄介者なんだ。せいぜい働いてもらうよ」
呆然とするまもりを、義理の姉たちはただ笑って見ているだけだった。
それから、まもりは三人に下女のように使われた。
やれ飯の支度がまだだの、ドレスを出しておけだの、買い出し、繕い、掃除、洗濯…
毎日、ボロボロになるまで働かされた。
その間、彼女らは優雅に買い物をしたり、お芝居を観に行ったり。
そしてまもりには、決して新しいドレスを与えなかった。
すべて姉たちのすりきれたような古着。
彼女らは、自分たちより美しい容姿を持ったまもりを、執拗にいじめていたのだ。
ある時、継母に煙突掃除をさせられた事があった。
本当は、煙突掃除屋にさせるところを、わざとまもりに押し付けたのだ。
苦労しながらもようやく、高い煙突に登ったが、煙突の中で足を滑らせて真っ直ぐ落ちてしまった。
幸いにも軽いケガだけで済んだが、やっとの事で暖炉から這いずるようにして出てきた時には、まもりは頭から灰だらけになり、真っ黒になってしまっていた。
待ってましたとばかりに、暖炉の前で義理の姉たちがまもりを指差して笑う。
「あらぁ、キレイなお顔が台無しね」
「あんたには、お似合いの化粧だわ、この灰かぶり」
「灰かぶり」。
それ以来、彼女らは、まもりの事を度々そう呼んだ。