芯樹〜シンジュ〜

□Clossing Over 〜devil.
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 …そもそもの間違いは、階段で口喧嘩なんか始めたからに違いなかった。



 二人は後悔したが、もう遅かった。

「…どーしてくれんだ、糞マネ」
 と、まもり。
「…知らないわよ。なんで全部私のせいなの?」
 と、ヒル魔。

 そしてまた口喧嘩開始。
 だが流石にそれは短時間で打ち切られ、舌打ちをした『ヒル魔』が膝を付いたままの『まもり』に手を差し出し、起き上がらせた。

 手を握ったまま、『ヒル魔』はずんずんと歩く。
 『まもり』は困惑しながら「どこへ行くの?」と尋ねる。

「こんな体でマトモに授業出来る訳ねェだろ!部室だ、糞マネ!」
「…っ、そんな言い方…!」
「あと、喋んな、気色悪ィ」
 『まもり』はムッとしたが、彼の言う事は解る気がしたので、黙ってついて行く事にした。


 始業を告げるチャイムが鳴っている。
 部室には、ヒル魔とまもり。
 『ヒル魔』はノートパソコンを開いて、器用にキーボードを叩いた。
「わ…」
 思わず感嘆の声を出した『まもり』に、『ヒル魔』は怪訝そうな顔。
「あ…ごめんなさい。なんか、違和感があって…」

 パソコンを使いこなす自分の姿…想像も出来なかった。

「そりゃ、俺のセリフだ糞マネ」

 椅子に座ってもじもじとしている自分…この上なく気分が悪い。


「もっと堂々としやがれ!」
「だっだって…!」
 その後を、『まもり』は続けなかった。
 代わりに真っ赤になって、うつむいてしまった。

「…そんなに嫌か、『俺の体』」
 『まもり』は勢いよく立ち上がり、「別に、そういう訳じゃっ…」と言ってまた顔を赤らめる。
「ひ…ヒル魔くんこそ…」
 『ヒル魔』は、背筋がぞわぞわしてたまらなかった。
 自分の声で、『ヒル魔くん』などと呼ばれてしまった。
「わ…『私の体』…」
 やっぱり、『まもり』は口ごもってしまった。
「何か、スースーすんな」
「!!」
 『まもり』は憤慨したように顔を歪め、目の前の自分がニヤリと笑ったのを見た。

 そうだ、全ては階段で口喧嘩なんかするから…



 ヒル魔と付き合うとか付き合わないとか、お互いはっきり言わないまま、なんとなく一緒にいた。
 どう思っているのかずっと尋ねてみたくて、ついつい流れで訊いてみた。

 そしたら「テメェの胸に聞いてみろ」だの、「今更言う事か」だの言ってはぐらかすばかりだったので、「はっきり言えばいいじゃない!」と振り向いて怒鳴った。

 その瞬間、
 まもりはバランスを崩し、銃を投げ捨てたヒル魔の腕に抱かれながら、派手な音を立てて二人とも転落してしまった。
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