芯樹〜シンジュ〜

□come back again
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 雨が降った。
本来ならまだ部室にいる時間なのに、部員たちは総出で捜していた。

「まも姉、やっぱり警察に届けた方が…」
 鈴音が、傘もささずに必死になっているまもりに言った。
 そっと傘に入れてやるが、まもりはそれに気付いていない。
雨に濡れようが何だろうが、どうでもいいらしい。
 なりふり構わないその姿に、鈴音は胸を痛める。
「妖兄を見たっていう証言だって、アテにならないよ。だから、ねえ、警察に任せよう?」
 まもりは、応えなかった。
動いている方が楽なのに。
『最悪の事態』を考えないで済むのに。
 バシャバシャと水しぶきをたてながら、商店街周辺を捜していたセナとモン太が合流した。
 不安げに見つめる鈴音に、セナは首を横に振って応えた。
「…そう」
 鈴音は、まもりを見たが、その目には、何も映っていなかった。
「…手がかりナシっスよ。あれだけ目立つ人だから…」
 その続きを、モン太は言わなかった。
 まもりは、沈黙の後、弱々しく微笑んだ。
 背後から、バイクの音がした。
 十文字、黒木、戸叶の三人が、びしょ濡れになって到着した。
「駄目だ、いねーぞ!」
 黒木が、雨に負けまいと叫んだ。
「線路沿いに捜してみたんだがな…」
 戸叶が、力なく言った。
 ちょうど、ムサシと栗田、小結、雪光も向こうから歩いて来るのが見える。
しかし、肩を落とした栗田の様子から、結果は予想がついた。
 十文字は、ハッとして、走り出していた。
 振り返るセナ、モン太、鈴音の横で、まもりが崩れかかっていた。
 十文字は、まもりを受け止めた。
「!」
「まも姉!!」
 混濁(こんだく)してゆく意識の中で、誰かが額に掌を当てているのが解った。
「…ヒドい熱だ」
 そして、抱きかかえられた時に、まもりは意識を失ってしまった…。
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