芯樹〜シンジュ〜
□Rainbow marble
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そうよ、あのヒトはいつだって、そう。
自分勝手で、わがままで。
いつまでも子どもなだけよ。
それなのに、最近じゃ、彼を崇拝する女の子が沢山いるって聞いた。
…まさか。
「ええ、知らないの、まも!」
アコと咲蘭(さら)が、同時に叫んだ。
…そんなに、重要な事?
「一年の女子なんて、自分から奴隷にしてくださいってコ、いっぱいいるよ」
「自分から、奴隷?」
「ね、ね、咲蘭。それって、アレってことよね?」
アコと咲蘭は、また同時にキャーと言った。
…何が、キャーなんだか。
「だいたい、まも、ヒル魔くんの傍にいて、よくフツーでいられるね」
咲蘭が、意味ありげに言った。
「?」「なんで?」
「だぁって、ヒル魔くんって、ほら、その、手が早いって言うし。何より、かっこいいじゃない。…喋らなければ…」
最後の、『喋らなければ』は、とても小さい声だった。
「かっこいい?ヒル魔くんが?」
同性の、そういうセンスが解らなかった。
もともと、男の子にあまり興味がないのかもしれない。
今まで、何人もの人に告白されたけれど、どれも丁重にお断りした。
何も、誰も、私の心を揺さぶる事は、ない。
――これは、過信だろうか。
私は、人を恋しいと、思った事がない。
そこまでの熱情に、まだ、出逢った事がない。
だから、気づかなかった。
彼の、想いに。