novel
□peau de sucr
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「…君のこと…好きなんだ」
ある日の放課後。
ユイの下駄箱にあった手紙に呼び出され、彼女は人気のない階段の踊場に来ていた。
そこにいたのは、クラスの中でもカッコイイと噂される男子だった。
「…………え?」
「…君が転入してきた時…何て言うか、一目見たときから…あ、この人だ、って思ったって言うか…」
整った顔立ちの彼が頬を赤らめるとこちらもどぎまぎしてしまう。
「…だから…俺と、付き合ってください!」
ユイが普通の学校に通う普通の女の子だったなら…付き合うかどうかはともかく…この告白をとても喜んだだろう。
しかし、自分の住む家にいるあの兄弟たちの事を考えると………。
「あ、返事は急がなくてもいいから…」
「…ご、ごめん…ちょっと、びっくりしちゃって…」
でも………。
少しは、あの兄弟たちのことも忘れてもいいよね……。
「…こんな私でよければ…」
男の子の顔がぱぁっと綻ぶ。
(…これくらい…いいよね)
自分だって女の子なのだ。
恋の一つ二つしてみたい。
しかし。
「残念だったな、こいつは俺のだ」
そんな声がして、ユイの肩に手が置かれた。
ユイが振り返ってみると−−−
「す、スバル…くん…」
逆巻スバルの姿があった。
「…何だお前?一年か?」
男の子はむっとしたような顔でスバルを少し睨む。
「…だったらなんだよ」
しかしスバルはその倍以上の鋭い眼差しで男の子を睨みつける。
それで男の子はすこし怯んだ。
そうしてユイの方を向き、
「…彼氏、いたんだ…ごめんね…じゃ…」
そう言って悲しげに走り去っていった。
「スバルくん!!どうしてこんなこと…」
「は?だってお前が困ってるっぽかったから…」
「べ、別に困ってなかったよ!!」
「ふーん…?」
スバルはユイに疑いの眼差しを向けるが、何かに気がついたようににやりとした笑いをうかべる。
「…まさか、あのヤローに告白されて承諾しようとしてたわけじゃあないよな?」
ユイの顔がほんのりと赤くなる。
「……は?…まさか、マジでそうだったのか?」
「ち、違っ…」
「否定になってねーよ」
スバルはちっ、と舌打ちした。
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