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□ある日のこと
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〜A side〜
青い。吸い込まれそうな青。空はどこまでも続いていく。
ただ、それだけを見ていた。
見る物はそれしかなかった。
退屈とは思わなかった。
動こうとは思わなかった。
何も思わなかった。
自分の周りには廃墟と化した建物。
地面には埋め尽くされるほどの人。
彼らはもう動くことはない。全て亡骸だ。
自分以外動くものは何もないはずだった。
だが、何かの気配を感じた。
ゆっくりと目線を気配の方へ移す。
ゆらゆらと動く影が見えた。こちらへ向かってくる。幻だろうか…。
しかし、それは幻ではなく、影の主はゆっくりと現れた。
長い漆黒の髪を揺らしながら現れた人は青年のように見える。
逆光で表情までは分からない。
その人は目の前で止まり、じっと見下ろしていた。
しばらく何かを探しているように視線をさまよわせていたが、目が合った。
すると、その人の口が動いた。
「…お前、生きているのか?」
そう聞こえた。だから、答えてみる。
「−−−」
久しぶりに声を出した。でも、答えたのに何も返事をしてくれない。聞こえなかったのだろうか。
もう一度言おうとしたとき、その人の変化に気付いた。
その人はいつの間にか氷の塊を持っていた。太い氷柱だ。
氷柱は彼の手から離れていく。
そして、それは勢いよく向かって来て、衝撃と共に胸に突き刺さった。
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