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□転機
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〜A side〜
「だから、ぼくの近くにいると死んじゃうよ?」
そう言ったのにその人は動かない。
このままじゃ病気が移ってしまうのに…どうしてだろう?

すると、その人は先端に赤い石が付いた短い杖を取り出してぼくに向けた。
光が杖の先端に集まってきて、氷の塊ができた。
それが分裂して、さっき刺さったものよりも小さい氷柱がいくつかできた。
何をしているのだろう?
考えていたら、氷柱がぼくに向かって飛んできた。

ドスッと音が響く。
今度は1回だけではない。
氷柱が全部刺さるまで何度も響く。
「うっ、あ…」
自分の声が漏れるのが聞こえた。
体中に痛みを感じた。
けど、すぐに何も感じなくなる。
何も見えないし聞こえない。
だけど、それもほんの一瞬。

ゆっくり目を開けば、
そこには杖を持ってぼくを見ているあの人がいて、
体に刺さっている氷柱は傷と共に消えてなくなっていく。
呼吸も苦しくて
「ゲホッ!」
とまた咳が出て、血が口からたくさん出てきた。
やっぱり死ねない。

死ねないけど痛みは感じるし、起きた時はすごく苦しいんだ。
何故、死ねないんだろう…

その人を見ると、口元に笑みを浮かべてぼくを見ている。
「大体は予想通りだな…ん?」
とその人は空を見上げる。
ポタッと顔に雫が落ちてきて、一気に雨が降り出した。
「スコールか、丁度いい」
ザーッと降りしきる雨の中、ポツリとその人は言った。

その人は杖を持つ手を空に向かって伸ばす。
すると、雨が杖の先端へと集まって大きな水の球になった。
雨を吸収して大きくなった水の球。
その人は今度はそれを投げてきた。
「っ!?」
とっさに目をつぶる。

ザブンッ
体が浮く感じがする。
恐る恐る目を開けると周りの景色が歪んで見える。
「ゴボッ!」
息ができない。
息を吸う暇もなく水の中に入ってしまったからすぐに息苦しくなる。

苦しい、頭がぼーっとする。
それに体が冷たくなって動かなくなってきた。
意識が遠くなっていく。
でも、やっぱりぼくは死ねないんだろう。
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