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□非日常
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〜A side〜
何も見えなくなった。
何も聞こえなくなった。
でも、ほんの一瞬だった。
……
……
何かが聞こえた。何の音か分からなかった。それに息が苦しい。
息を吸おうとするが吸えない。息ができない。苦しい。
……カハッ
また、音が聞こえた。
息をしようとすると聞こえる。
あぁ、そうか。これは自分の口からもれてる音だ。
すると、とたんに苦しさが増してきた。
「ク、カッ……ゴフッ!」
咳き込んだら口から赤い液体がたくさん出てきた。鉄の味がする。
顔を横に向け、口の中から吐き出せるまで全部出したら、やっと少しだけ息が吸えた。
ヒュゥヒュゥと自分の呼吸音が響く。
うっすら目を開けてみる。空は赤いままだ。
胸元を見ると、氷柱も刺さったまま。しかし、刺さった時よりも大きさが小さくなっている。
氷柱をじっと見つめていると段々氷柱は小さくなっていき、まるで自分の体に吸収されるかのように消えていった。
ゆっくりと腕を持ち上げ、氷柱が刺さっていた箇所を触ってみる。
手にべっとりと血が付いた。なのに、傷口がない。
血の付いた自分の手を見ながらゆっくりと息を吐いた。
ヒュゥッと音が響く。
「また…死ねなかった」
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