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□何故？
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〜A side〜
さっきの長い黒髪の人がぼくの顔を上から覗き込んできた。
その人を見る。相変わらず、逆光で表情が分からない。すると、
「お前、なんで生きてやがる？」
と聞いてきた。
何故なんだろう…
どうしてぼくは死ねないんだろう…
考えていたら、その人は不機嫌そうな声で
「おい、答えろよ」
と言って、急にぼくの髪を掴んでそのまま上に持ち上げた。
髪が引っ張られて痛い。
けど、すぐにその人はぼくの髪から手を離した。
ドサッとまた倒れる。痛い、頭を打った。
その人を見ると片膝をつき、頭を押さえている。
頭が痛いのかな？…多分、違う。
もしかしたら、病気が移ったのかもしれない。
でも、皆と違ってまだ死んでないから移ってないのかな。
病気が移ったらこの人も死んじゃうのかな。
なんだろ…なんでか分からないけど
この人が死んじゃうのは嫌だな。
「……あまり近寄らない方が良いよ」
すると、その人は顔を上げて
「…あ？どういう意味だ？」
と不機嫌そうな声で言った。
今度は答えてくれた。
それだけなのになんだか嬉しくて口から言葉がこぼれていく。
「ぼくは病気なんだ。ぼくに触ると病気が移って皆死んだ。」
その人は黙って辺りを見渡してから言った。
「”皆”ってのはこいつらのことか？」
答えようとしたとき辺りが少し暗くなった。
太陽が雲に隠れたみたいだ。すると、その人の顔がはっきり見えた。
あの時、一瞬見えたのと同じ。
何か不満そうな顔、赤い瞳でぼくを見ている。
ちゃんとぼくを見てくれている。
嬉しくてまた、言葉がこぼれ始めた。