閃光を纏う緋弾
□装填弾 武偵の朝
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−−俺には『黒の閃光』という“伝説の異名”がある。
それは、ある任務で凶悪犯罪集団を逮捕したことによりついたのが、きっかけだろう。
まぁ、そんなことで有頂天になるほど馬鹿ではないが……それでも、その名を最大限に俺は利用している。
だから少なくとも俺、紅坂 黒霧は−−−−
伝説の異名を利用しながら目の前に救いを求めるモノたちを救い出すために、差し出された手を握りたかった……少しでも多く……。
大切な仲間をも護りたいから−−
◆◇◆◇◆◇
ピピピピピ、ピピピピピ。
カーテンを閉めきった薄暗い部屋に鳴り響く携帯電話の着信音。
−−ダブルベッドの布団の中。黒いTシャツに黒いズボンの姿でいる俺は寝ぼけた眼を擦りながら布団をのけ枕元で鳴り響いている携帯電話を探し当て、ゆっくりとフリップを開ける。
着信あり。
液晶には『中空知 美咲』という文字が表示されている。
「……ふぁ……中空知?」と欠伸をしながら俺は通話ボタンを押すと−−
『−−おはようございます。紅坂君。中空知美咲です』
不意に、耳に入ってきたアナウンサー喋りの、それはそれは心地のいい中空知の声が聞こえてきた。
その心地のいい声
を聞いていると、つい無言になってしまう。
『今日から新学期です。失礼ながら、電話機を介して紅坂君に連絡させていただきました』
「あぁ……ありがと、中空知」
俺は少し戸惑いつつも、中空知にそう返す。
「俺は、そろそろ身支度しないといけないから。電話切るぞ?」
『はい。わかりました。学校にて会いましょう』
「あぁ、学校で」と言って俺は電話を切る。
ベットから起き上がり、もそもそ、とYシャツをはおり制服のズボンをはくと、俺は座卓の上にメンテナンスし終えている拳銃GLOCK17と弾倉を見た。
(弾倉に銃弾入れないと、な……)
などと思っていると−−
ピンポーン。
玄関のインターホンが鳴った。
どうやら誰かが訪ねて来たみたいだ。
居留守を使おうかな、と思っていると……ピンポーン、二回目のインターホンが鳴った。
うーん、居留守は無理っぽいな。
俺は一人で住むには広いVIPルームの部屋を渡り……ドアの覗き穴から、外を見た。
「……ん」
−−ドアの向こう側に立っていたのは柘榴だった。
純白のブラウス。臙脂色の襟とスカート。
武偵高と一目でわかるセーラー服を着て、何やら呼吸を整えて
いる。
んー……こんな所まで来て、どうしたんだろうか。
そう思いながら−−ガチャ。
「柘榴」
ドアを開けると、柘榴はすぅーはぁーと深呼吸をして、
「黒霧様」
柔和な笑みと共に「おはよう御座います」と言ってきた。
「あぁ……おはよう。で、どうした?こんな所まで来て」
「少しでも黒霧様の御世話をしたくなりまして……」
柘榴は深々と一礼して赤く染まっているツインテールが、フワリと柔らかく揺れていた。
木塚 柘榴(きづか ざくろ)。
黒霧様という呼び方では、わからないと思うけど、俺と柘榴は幼なじみなのだ。
外見は、お嬢様然としていて、左目尻にある小さな泣き黒子と、柔らかなウェーブを帯びたツインテールが印象的な美少女で制服越しにも見て取れてしまう豊満な胸。
相変わらずのスタイルの良さだな。
「お世話とか気にしなくていいって」
「私(わたくし)が御世話したいだけなので気になさらないでくださいませ」
「んー、ならいいけど。まぁ、とりあえず上がりなよ柘榴」
柘榴は「お邪魔いたします」と礼儀正しく丁寧に頭を下げてから玄関に上がり、脱いだ黒いストラップシューズをこれまた丁寧に揃えた。
「
で、こんな朝っぱらから、どうした?」
きちんとテーブルにつくのも面倒だったので、俺は座卓付近に腰を下ろす。
「お弁当をお持ちいたしました」
柘榴は自分もふわりと座卓付近に座っている俺の真ん前にくるように正座すると、持っていた和布の包みを解いた。
そして出てきた漆塗りの重箱を俺の前に差し出すと、綺麗な薪絵つきのフタを開ける。
そこにはふんわり柔らかそうな玉子焼き、ちゃんと向きを揃えて並べられたタケノコの煮物、銀鮭といった食材と、ほんのりと良い香りがするごはんが並んでいた。
「うまそうだけど……作るの大変だったんじゃないか?」
塗り箸を渡されながら言うと、柘榴は、
「い、いえ、少し早く起床しただけですので……」
「そうか……」
と言いながら、柘榴が作ってくれた和食を有り難くいただくことにした。いつも思うことだけど、やっぱり柘榴の料理はうまい……うん。
柘榴は正座したまま座卓の上に散らかっていた銃弾−−9mmパラベラム弾を弾倉に入れやすいように集めてくれていた。
……『ありがとう』くらい言うか。春休みは任務ばっかりだったしな。
腹いっぱいになった俺は銃弾を弾倉に入れながら、柘榴に向