◎two mini story

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「日本も寒いっ…」



空港から出た途端に
俺の隣で小さく肩を震わせるテミンは
まだ春は来てませんよ、とツッコミを入れたくなるくらい薄着だった。

どうせテミンの事だから
昨日暖かかったから今日も暖かいんだろーな、
とかいう理由だろう。



「ほら、これ」



自分の首に巻いていたマフラーを外しテミンに巻こうとする。


「ぇ、でもミノヒョンが寒くなるでしょ?」



くるんとした目が上目使い気味に俺を見る。

純粋に可愛すぎて目が合わせられない。



「俺はいいの、寒さに強いから」


「こないだのインタビューでは寒いの嫌いって言ってた」


「暑いか寒いかでいったらだよ」


「でも悪いよ…」


「俺はテミナが風邪引くほうが嫌だから」



その一言でおとなしくなったテミンの首に否応なしに巻き付けた。




「…ありがと」



寒さのせいで赤くなっているらしい頬が愛おしさを倍増させている。


そんな姿に着ているコートまでもテミンに着せてあげたかったけど
さすがにそこまでしたら引かれそうなのでやめておいた。




「ね、ミノヒョン」


「ん?」



一向に迎えに来ない車を待ちながらテミナが呟く。



「ヒョンは好きな人いるの?」



あまりにも急な質問に思わずテミンの方へ向き直ると
不安そうな面持ちで前の方を見据えていた。



「うん、いるけど…」


まともに顔も見れず視線を外し
切迫した空気に圧されて答えてしまった。



「その子はヒョンに見あうくらい可愛くて良い子なの?」


「あぁ、俺には勿体無いくらい
…テミンは?」




もちろん『その子』はテミンだ。



返ってくる答えなんかわかってるのに
聞き返した自分に嫌悪感が湧く。




「僕もいるんだ」




ほらやっぱり。


テミンは自分が好きな人いないのに
恋の話振る人じゃない。

わかってたのに。




「そっか…、まぁテミンなら可愛くて優しい子と上手くいくよ」




またやってしまった。
言った後に出てくる虚しさに腹をたてながら
バレないように溜め息を吐いた。




「…別に僕は可愛い子なんかいらないよ」




静かに、だけど強い声音が隣から響き
もう一度テミンに視線を向けると




「…、テミナ?」




先程までどこか遠くを見ていた瞳が
今度は俺をしっかりと捉えている。




潤んだ瞳、赤く染まった頬、白い肌。

その全てがひどく美しかった。




そしてテミナの口許から漏れた言葉は






「僕が好きなのはミノヒョンだからっ…!」





目眩がするほどに俺の心を揺さぶった。





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