薄桜鬼

□君が俺の全て
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自分を中心に広がる、赤

動くモノは無い、赤が視界を埋め尽くす

「……派手にやったな」

後ろから声を掛けられる

『…ん〜? そうかな、わかんないや…』

俺には此れが、いつも通り

視界を赤で埋める、動くモノは斬る

もう人を斬る事に、躊躇いは無い、何も感じなくなった

悪鬼だと、誰かが言っていた

「……帰るぞ」

歩き出す気配を感じる、だけど俺は動かない

『…ねぇ…一ちゃんは、俺の事どう思う?』

一ちゃんも俺を鬼だと、悪鬼だと思っているのだろうか?

「……何だ、いきなり」

『知りたくなったから、で…どう思ってるの?』

夜の室内、灯りは無い

一ちゃんの表情が見えなくて、少し不安になる

「…俺は、…お前が好きだ」

………………は?

『……』

予想していた、返答の斜め上の回答に、ズッコケそうになったよ…

「……」

『………一ちゃんは、ちょっとズレてるよね…』

言いながら、一ちゃんの傍に寄れば、少し赤い顔で仏頂面だった

「……何故だ、あんたがどう思っているのか聞いたのだろう」

『…俺の事怖くないの?』

「怖がる必要が無い、煉が俺を傷付けた事は無いからな」

そうだっけ、覚えてないや

『一ちゃん』

ぎゅっと手を握れば、優しく握り返された、ほわりと胸の辺りが温かくなる、これはなんだろう?

『…俺も、一ちゃんが好きだよ』

俺の言葉に、ふわりと笑みを見せる

また、胸の辺りが温かくなった

「煉、帰ろう」

赤を纏い、二人で歩く

悪鬼になった俺でも、まだ心なんて物が、残っていたらしい

一ちゃんが居れば、俺は大丈夫

でも、一ちゃんが居なくなったら

俺は悪鬼になってしまうのだろう

『…大切に、したい…かな』

「……なんだ?」

『何でもないよ、一ちゃんが大好きだって考えてただけ』

「………ばか、大きな声で言うな」

『好きだよ?』

「……五月蝿い」

『一ちゃんが、居ないと俺壊れちゃうよ?』

「ならば…一生傍に居てやる」

『…かーわい』

ご機嫌で屯所に帰ったら、土方さんがご機嫌斜めで待っていた

「…何故俺まで怒られねばならん」

『一ちゃんが、俺のお嫁さんだから?』

「…あんたが嫁じゃないのか?」

『………え?』

「………ん?」

その後、どっちが嫁かの言い合いが始まって、また土方さんに怒られてしまった





おしまい☆
2016.02.20
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