薄桜鬼

□狐に嫁入り
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そうと決まれば、長居は無用とばかりに、白は総司の荷物を纏めようとするが、松元が止めに入る

「…どこに行く気だ、沖田君は療養中だぞ⁉」

『うっさいなぁ、何なの? 療養して労咳が治るの? 進行を遅らせるだけでしょ? 死病だよ? 治るわけないじゃん、馬鹿じゃないの?』

言いたい事を言って、呆然としている松元を無視し、白は総司に肩を貸して部屋から出た

「………やっぱり、労咳は治らないんだ」

重たい身体を無理に動かし、白に連れられるまま診療所から出た所で、沖田が呟く

『…ん〜、確かに療養じゃ労咳は治せないよ? だけど、総ちゃんを助ける事は出来る』

「………そう」

自信満々に言う白に、期待してないような顔で沖田はため息を吐く

『…大丈夫だよ』

山の麓まで歩いて来ると、白は沖田を切り株の上に座らせ、茂みの向こうへ消えた

「……?」

暫くして白が入っていた辺りの茂みが揺れる、だが白の姿は見えない

「……っ、白ちゃん‼」

沖田はキョロキョロと辺りを見回し、焦った声で白を呼ぶ

―ガサリ―

茂みが大きく揺れ、黒い塊が飛び出して来た

「…狐……?」

それにしては、大きい

自分は此処で喰われてしまうのか、嫌な汗が沖田の背を伝う

『…そんな怖がらないで欲しいんだけど、白だよ』

「………白ちゃん?」

ぽかんと口を開けて、沖田は真っ黒な狐を見つめる

『…信じられないって顔してるね、でも声は一緒でしょ?』

困惑している沖田を背に乗るよう促し、白は駆け出す

沖田が落ちないよう、全ての尻尾を絡ませる

「…妖狐?」

腕、足、腹に巻き付く尻尾に沖田は
驚くが、大人しくしている



暫く走り、洞窟に辿り着く

「…ここは?」

『お家だよ、奥に小さいけど泉があるの、そこで説明するから、もうちょっと乗ってて』

洞窟は広いらしい、外の光が届かずただ闇が広がっている

「………」

闇に包まれる、言い様の無い恐怖が沖田を襲う

『…今、明るくするから』

白の口から火の玉が四方に飛び、辺りを照らす

「…………」

赤い光が小さな泉を照らし、キラキラと輝いていた

『……さて、説明をしようか』



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