短編

□私にできること
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「ん〜れなちゃ〜ん…」

今日は朝から珠理奈がくっついてる。

最近はちゅりばっかりで私の方なんて全然来なか ったのに…何かあったかな?

なんて思ってたら、私の膝の上に向かい合わせで 座ってた珠理奈からスースーと寝息が聞こえた。

「珠理奈…寝ちゃった?」

返事はスースーという規則正しい寝息だった。

「ふふ…本当犬みたいだね…」

私の首筋に顔を埋めて、気持ち良さそうに寝てい る珠理奈。

その寝顔からはいつもの大人っぽさは感じられな い。

いつも笑顔で元気で明るくて…私と正反対な珠理 奈はまだ高校生だ。

へたしたら私達より忙しい珠理奈。

疲れていないはずがない。

でもいつでも彼女は明るく振る舞う。

決して弱音を吐かない。

「ん〜…お母さん…」

起きたかななんて思ったら寝言。

可愛いなぁお母さんか…

そういえば…

彼女は一体何日間お母さんに会っていないのだろ うか。

1週間は会っていないんじゃ…

そう思ったら甘えてる理由がわかった。

寂しいんだ…

普通の高校生が1週間親に会わないなんてことに なったらどれだけ寂しいのだろう…

いつも明るく振る舞う珠理奈。

でも本当はすごく寂しがり屋で、もしかしたら無 理してるかも…

珠理奈を支えなきゃいけない。守らなければいけ ない。

そう思って、いなくならないように、消えてしま わないように、ギュッと彼女を抱き締めた。

その身体は細くて、折れてしまいそうだった。

私には何がしてあげられるだろう…

それはきっと今みたいに抱き締めて、彼女が背負 っている重い重い荷物を、少しでも軽くしてあげ ることだろう。

たとえ彼女が大丈夫と言ったとしても、私は荷物 を持つ。

それが私にできることだ。
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