短編

□おとしもの
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公演終わり、いつもだったら真っ先にわたしの所 にくるのにまだこない珠理奈。

どうしたんだろう…

と思ったら、楽屋のドアが勢いよく開いた。

「玲奈ちゃん!!一緒に帰りたいけど…お仕事入っち ゃったあああ(つд;*)」

既に涙目の珠理奈。

とりあえずドアの前で泣かれては困るから珠理奈 の手を引いて廊下に出た。

「珠理奈、お仕事なんだからしょうがないでしょ ?明日会うんだから泣かないの。」

「う゛ぅ…がんば…る…グスッ」

「珠理奈ー!行くよーっ!!」

スタッフさんに呼ばれ、さっきまで泣いていたと は思えない位明るい声で

「はーい!!今行きまーす!!」

って叫ぶ珠理奈。切り替え早いなぁ。

「じゃあ玲奈ちゃん…また明日ね(´・ω・`)」

「うん、また明日。頑張ってね。」

「じゃあ、最後に…チュッ行ってきまーーす!!」

「っ//もぅ//行ってらっしゃい。」

廊下を走ってスタッフさんの所に行く珠理奈。

あの子にはかなわないな…

…ん?何だろうこれ…

廊下に落ちていたのは一冊のノート。

確かこれは…珠理奈のだ。

レッスンのときに珠理奈が欠かさず持っているノ ート。

中…気になるな…

少しだけならいいよね…

いや、だめだめ!珠理奈のだからっ

一人で葛藤…。

勝ったのは…

「少しだけ…少しだけなら…。」

ノートを開くとそこには立ち位置、振り付け…

「うわぁ…びっしり…」

字はまだ幼いけれど、しっかり書かれた0番セン ターの文字。

振りは右からとか、0.5に下がるとか…とにかく これを見れば全部わかるんじゃないかっていう位 びっしり書いてあった。

いつも誰かに抱きついたり、キスしたり…甘えん 坊な珠理奈だけど、誰よりもSKEを良いものにし ようという気持ちが強いと思う。

だって…そうじゃなきゃ自分以外の立ち位置なん てメモしないから…

「すごい…」

思わず声に出してしまった。

「玲奈ー?何してるの?」

「えっ?い、いやなんでもないよっ!」

「気になるな…まぁいいや!!帰ろっ?」

「うんっ!!」

私は珠理奈のノートをしっかり持ってカバンの中 にそっと入れた。

明日会ったら、私からギューッてしてあげようか な。

やっぱり私は甘えん坊で犬みたいで、誰よりもS KEが好きな珠理奈が大好きだ。
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