Angel Beats!
□謝罪不要
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肉が裂かれる音がして、内臓系の器官がねちゃねちゃという悲鳴を上げている。
そして、腹に胸に肩に腕に繰り返し突き立てられたサバイバルナイフが、無情にも再度振り下ろされた。
ああ、痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたい痛いいたいいたい痛い痛いいたいよおとなし。
そして、お前も痛そうな声を上げてるな音無。
「なんでなんでなんでだよひなた。ひなた、ひなた日向、どうしてお前はそうなんだ、なんでお前はそうなんだよ。どうしてどうして、」
(ああ、痛い)
青空が浮かぶ屋上で仰向けに寝転がる俺の上に馬乗りになっている音無は、呪詛のように、どうして、何で、日向の三語を繰り返しながら俺の身体に何度も刃を差し込んでいる。俺の身体を刺した分だけお前の心から血が流れるんだぞ、と言ってやりたいのに口から出るのはこぽこぽと沸く血液だけだ。
「ひなた、なあ、俺を見ろ。見て。見てくれ日向、俺を。俺をちゃんと見てよ、なあっ?見ろよ、ひなた」
(見てって言われてもなあ…)
俺の両目は、先刻お前が刔り取ってしまっただろう?
そう内心で返答した直後、
俺は、死んだ。
…―――無機質な、白、
次に目を開けた時、一番最初に視界に入ったのはそれだった。
一瞬状況が把握出来ず何事かと疑問に思ったが、そういえば俺死んだんだっけ、と何の感慨もなく納得する。そして、段々と明瞭になってきた頭は、目に映るその白が保健室の天井で、自分は今ベッドに寝かされているのだということを理解。次いで右方向に目をやれば、枕元には多量な俺の血で汚れまくったシャツとブレザーが綺麗に畳まれた状態で置かれており、それより少し視線を上に向ければ、ベッドサイドにある椅子に俯いたまま腰掛ける音無が見えた。
「…お前が運んでくれたのか?」
ビクッ、と俺の問いに肩を震わせた音無だったが、言葉を発することはなかった。そうして必然的に訪れる沈黙。ひたすら押し黙る音無に、俺もそれ以上言葉を掛けることはせず、ただじっと音無を見つめた。
(…バカだなあ、)
そんなに傷付く位なら、やらなきゃいいのに。
俯きうなだれる音無を視界に入れたまま、俺は内心呆れた。