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□二人の世界で 1
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二人の世界で 1
『裏切り者‼』
あいつは、あの時から俺をそう怒鳴る。
…裏切り者で悪かったな。
鋭い目つきで俺を睨みつけて、
主人から得た力を自らの手に宿らせる。
俺はニヤリと口を歪めながら、
売り言葉を紡ぐ。
単純なあいつはいつだって、怒りに震えて炎を散らし、真っ正面から襲って来るんだ。
『お前ごときに吠舞羅を気安く
語られる覚えはねぇ‼』
ああ、酷くいらいらする。
誇りだの、絆だの、仲良しごっこ
も大概にしろってんだ。
俺は舌打ちをして、こう言った。
『俺は所詮、お前らとは違う人間だったんだよ。』
そうやってお互いをけなしあって、別々の道を歩く。
昔のままだったら俺は今、お前と同じ道で仲良く手を繋いでいたのだろうか。
ふと、俺はそう考えてから、
少し泣きそうになった。
*****
ピピピピピピ…と部屋に電子音が
鳴り響いた。
「…んぁ?」
耳元で鳴る音の正体を手で探し、
ピッとボタンを押した。
「…7時……半、か」
十束さんと尊さんがいなくなって、もう1ヶ月をきっていた。
はあぁっと大きく溜息をついて、
俺はベッドから降りる。
暑がりな俺は、黒いタンクトップに短パンという格好でも平気だったが、今日は特に寒いようで。
「さっみー…!」
伸びをして、冷蔵庫を開けると、
中は見事にすっからかん。
「あー…切らしてんの忘れてた」
あちゃー、と頭を抱えて俺はうずくまる。
「吠舞羅に行く前に買ってくかぁ…」
俺は渋々身を起こし、
服を着替え、トレードマークの帽子を被って、スケートボード片手に勢いよく玄関を飛び出した。