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□二人の世界で3
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パタン

玄関のドアを閉めて、猿比古は
俺をリビングに連れて行ってくれた。

「…美咲、ちゃんと話して」
「……ん」

猿比古をいざ目の前にしてみると、何だかとろりとした感情が、心の奥からこぼれ落ちて、
目頭あたりがじわじわ熱くなった。

「……あ、あのな…」
「…うん」

猿比古はソファに座り、俺の両手
をとった。

「俺、俺……っおれ、」

一人ぼっちになっちゃうのかな

ブルブル震える俺の手が、
ぽたぽた濡れていく前に、
視界がにじんで見えなくなった。

「…美咲、」
「……う、ひっ…うぇっ…」


こんな自分、情けないが自分じゃ
どうしようもない。
止まらない涙も、どうして泣いてるのか分からない。
俺は、猿比古の前じゃ、どうやったってうまくいかないんだ。

「…っ猿比古ぉ……」

助けを求めるように、ただ俺は
猿比古の前に立ち尽くして、
手を握りしめていた。

「……美咲」
「う、ひっ…ひっく、うぅー…」

猿比古は、いったん手を離して
腕を俺の前に広げ、こう言った。

「……おいで」

ぶわっと目が一気に熱くなる。
俺は、半分衝動まかせに猿比古に抱きついた。
あぁ、そうだ。

俺は、こうして欲しかったんだ。

「う、うぇ…っうあああああ‼」

受け止めて欲しかった。
他の誰でもなく、猿比古に。
一緒にいて、一緒の想いを持ち合わせて、一緒に泣きたかった。

世界に一人ぼっちなんて、もうこりごりだ。

居場所が欲しい。

「…美咲……美咲」

この温もりを、離さない。






後に聞いた話で、ひとしきり泣いた俺は、猿比古にしがみついて寝てしまったらしい。

子どものように甘えるのも、
たまにはいいかなと思うんだ。

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