入学式。


桜の花びらが満開?ってわけじゃないけど…

綺麗に咲いていた4月。


この季節、あなたと出会って

一瞬で恋に落ちてしまいました。




★Maruyama.R★





今年一番の席替え。



後ろの席で。

窓際で。

どうか彼の隣にっ!!!



クジの順番が回ってくるまでの間。


両手をガシッと合わせ…

クジ箱に向かい、祈り続けている。




そんな私の祈りも虚しく


引いてしまった席は、前から3列目。


窓際ってわけでもない、何とも微妙な位置。



男『隆平!!お前どこ?』

丸『んー、あっ…一番後ろだ』

女『私、丸ちゃんの隣!?キャー!!』


おまけに、大好きな丸山くんとも離れちゃった。



新しい席に移動し、溜め息を1つ。

次の席替えまで、ココで我慢かぁ…



丸山くんの隣になれて喜んでいる女子が、正直羨ましい。






先生『皆移動したかー?そろそろ授業始め』

丸『先生!!』



片手を上げた丸山くんが、担任の言葉を遮った。



先生『何だ?丸山』

丸『俺この席からじゃアレが見えないんで、席替わってもいいですかー?』
 


アレって??

誰もがそう思い、彼が指差している方向を確認する。




先生『黒板?お前、視力そんなに悪かったか??仕方ないなぁ』



担任の言葉に、クラスの女子が騒ぎ始めた。


そりゃあ、丸山くんモテるし?

面白いし??

クラスのムードメーカーだもんね。

正直、私とじゃ不釣り合い。

まるで月とスッポンだ。 

 



丸『…なぁ、俺の席と替わってくれる?』

男『え?マジでいいの!?一番後ろじゃん』

丸『うん』




『…ぇ』


私の隣だったはずの男子。

ウキウキしながら、後ろの席の方へ。



ん?どういうこと…??


何で丸山くんが、私の隣の席に座ってるの???


起きたばかりなのに

また夢でも見てんのかな。










丸『ふふっ、よろしくね』

『!!!』



夢じゃない。

あの…、あの丸山くんが隣にいる!!!


私に話し掛けてくれたし、笑ってくれた!!!!



緊張のあまり、言葉になんかできなくて。


精一杯の力を振り絞り

コクコクと首を振り続けた。




丸『ふふっ、可愛い』

『っ、』



可愛いって…。

丸山くんの方が、何百倍も可愛いのに。








あんなに慌ただしかった席替えも終わり…

そのまま授業が始まる。




先生『今から書くこと、大事だからな。ちゃんとノートに写しとけよ』


黒板にスラスラと書かれた文字を、写そうとした瞬間。



『え?』


丸山くんから渡された1枚の紙切れ。


彼の方へ視線を移すと、思いきり目が合ってしまった。



丸『…シー』


人差し指を口元に当て"黙って"の仕草。


『っ、』

何もかもが反則だよ。

私の気持ちに気付いて、わざとやってんの?

確信犯??



そんなわけないか、なんて失礼なことを思いながら…

渡された紙切れを、そっと開く。




【知ってる?俺がココに来た理由】


丸山くんが、私の隣に来た理由ってこと?

黒板が見えないからじゃないの??



分からないまま、再び目を見合わせた。


丸『…ボソボソ』

『!!!』


彼の口元が、確かにこう言った。

"好きだからだよ"って。





あなたとの距離が、また一歩

近付いた瞬間だった。


end

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