ぐほっ
□冗談から始まる恋
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「・・・ヤダこの色。最低、その役にたたねー目玉穿ってやろうか」
「はあ!?このレ(俺)が吟味して選んだ志向の一品を最低とかありえねーし!まえ(お前)の眼球抉ってやるよ!!」
広い部屋、天蓋つきベッドの柱からのびる鎖が、サニーの今の生活と身分をそのまま表していた。
だが、格別何かされるということはなく、外に出られず通信手段を全て絶たれていること以外は、自由で快適な暮らしだった。
望めば、大抵の物が手に入り食事もサニーが今まで口にできなかったグルメ界の食材も食べられる。
あとは、この男のわがままと夜の情事に耐えればいい話。
「・・・・・・リンやトリコ、どうしてっかな・・・」
ポツリと呟く。
恐らく向こうは必死でサニーのことを探しているのだろう。
誘拐は、ある意味殺人より性悪な犯罪だ。
殺人は本人が死んで終了だけど、誘拐は、開放されてからも続いてしまう。
ズレた人生を、続けなければいけない。修正不可能なのに。
理解できなくなった、人の普通というものに隷属しながら。
「っ!!ぐっは、あ」
そう先ほどの言葉を漏らした途端脇腹を襲う衝撃。そのまま壁に激突・・・はせず、鎖と柱とサニーの首がみしみしと悲鳴を上げる。
「、っげほ、ふ、ぅ、」
「お前さー、ホントいい根性してるよネ。
ボクが目の前にいるのに他の人間の名前出すとか」
「なめてんの?」とべちゃりと効果音がつきそうな笑顔でサニーの前髪を掴むトミーロッド。
空気とともに赤い水を吐き出しながらサニーは改めて自覚する。
無理だと。
自分は二度と、普通には帰れないのだと。
「お前の世界で一番愛している奴はダレ?言ってみな」
「・・・トミーロッ、ド。 まえ、だよ・・・」
その答えに満足げに目を細め唇を奪いながら手荒く押し倒す。
「んん!ん、っ、はぁ、ぁ」
顔の角度を変え何度も何度も味わい尽くした後、一時的に開放されベッドに仰向けに、重力にしたがって倒れこむ。
発展しない思考。霞む心中。
ああ堪らない。
だいじなものがいろいろとろけていく。
それでもいいと、また諦めてサニーは目を閉じる。