ぐほっ
□粃の森
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「今日、アイが死んだ」
「へー、そーなんだ」
昨日まで一緒に過ごしていた者の死を聞かされても、心底興味がなさそうに返事をするトミー。
「・・・冷たいな」
「ふん。話題作りのためだけにその話持ってくるスターに言われたくねーよ」
鼻を鳴らしながらジト目で言い返すトミーの言葉に対して、特に修正する箇所もないので押し黙る。
「・・・・・・・」
昔は、沢山の人間が二人の周りにいた。
男も女も若いのも年寄りなのも小さいのも大きいのも弱そうなのも強そうなのも美しい者も醜い者もよりどりみどりだった。
だが、いつの間にかいなくなったり目の前で死んだりと、次第に周りから人はいなくなっていた。
そして、ずっと残り続けているのはスタージュンとトミーの二人だけ。
いつの間にか、いつも誰もいなくなっていた。
「……外の世界は、どういうとこなんだろうな」
ぽつりとした呟きをトミーが拾う。
「だからぁ、言ったダロ?
外の世界に住んでて満足してる奴もいるけどボクみたいに不満抱えながら生きてた奴も大勢いる。
スターが話してほしいキレイなお話なんざ、ボクは持ってないんだよ」
どうやら、自分に言ったものだと勘違いしたようだ。
「それに、あんなトコに戻るよりココにいた方がずーっといいしね」
吐き捨てるように言うトミーを見ながら、ここの方がいいなんて余程ひどい生活だったんだろうな、と勝手に想像した。
薬を毎日毎日山程投与されて、耐久性テストで喉が焼ききれるほど悲鳴をあげて、
それでも毎日を生きている。
死に対する恐怖など、持ち合わせていない。
それを感じる心は、磨耗し疲れきってしまったのだから。