ボルテージ♪ルームシェア素顔の彼♪

□ルームシェア素顔の彼♪@
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ルムカレ♪ ・・・・「危険な香りのドキドキシェアハウス!!!」


小鳥遊邸に来てから戸惑う事の多い日々の中、なんとか生活にも慣れて来たこの頃
私は思い悩む出来事があった。


「七海ちゃん、このDVD観たいって言ってたよね?今から一緒に観ない?」

いつもの調子で部屋にやって来たのは祐介さんだった。

「あ・・・・えっと・・・・」

(今からって・・・もう22時なんだけど・・・)

ちらりと部屋の時計を見た私は一瞬どう答えるか返答に迷う。

「何してんすか・・・・」

そこに聞き覚えのある声が聞こえてドキリとすると、案の定その声はまるで通りすがって偶然出くわしたかのような顔をする清田さんだった。


「ああ、創ちゃん。いやね、このDVDを観ようって七海ちゃんに誘ってたところ。
もしかして創ちゃんも一緒に観たかった?」

いつもらしい口ぶりで祐介さんは楽しそうに清田さんに問いかけるけれども、とても誘ってるような顔付きではなかった。

「別に・・・俺は興味ないですから・・・・二人でどうぞ・・・」

いつもながらに清田さんもぶっきらぼうに言い放ち、通り過ぎ様にちらりと睨むように
こちらに視線を泳がせながら勢いよく部屋のドアを閉めて中へ入ってしまった。

(な・・・何あれ!感じ悪・・・・・!!)

「・・・・・なんだろ?なんか、怒ってた?」

「さ、さぁ・・・・」

わけが分からないという表情で裕介さんは首を傾げたが、まぁいいかとまた私に振り向く。

「さ、邪魔者も消えたし、行こう!七海ちゃん♪」

(じゃ、邪魔者って・・・・それより、私オーケーなんて出してないんだけど??)

私が困惑しているのも気にもとめずに、半ば引っ張るように裕介さんは手を引いて
気が付けば部屋の中に連れ込まれていた。

「えっと、あの・・・・・それ、何時間あるんですか?」

明日も仕事だし、とりあえず映像時間を聞いてから断ろうという作戦に出る。

「え?これ?うーん・・・・。多分、1時間くらい?」

(う・・・・・断りづらい・・・)

微妙な時間に断るにも断りきれず、私はしぶしぶ案内されたソファーへと座る。

と、その真後ろに裕介さんがどしりと腰をおろす。

「え・・・?」

あまりの予想外の行動に驚いた私は振り返り凝視する。

「ん?七海ちゃん、はじまっちゃうよ?ほらほら前、見てて前!」

さも自然な事のように裕介さんは動じる事もなく私を画面にむかせて映画を観始める。

(いや・・・いやいやいや・・・この体勢は・・・・ない!!)

どう考えても、まるで恋人同士のようなこの体勢に私の心臓は爆発するのではないかと思うくらいに騒がしく動き出す。

だけども、裕介さんは気にするでもなくソファーにくつろいだ姿勢でテレビ画面に釘付けでいる。
まるで気にしているのは自分だけのようで、何とか体が触れないように前のめりになっている体勢に馬鹿馬鹿しく感じてしまうほどだ。

(裕介さんって女慣れしてるのは知ってたけど・・・・ここまでくると・・・
友達の域を超えてるよね・・・。っていうか・・・どこまでフレンドリーなんだろ。)

この変な緊張感から、私は観たいと思っていたDVDなのにちっとも視界にはいらず
動揺している自分を隠すのに必死だった。

「あ、七海ちゃん、ちょっとリモコン取ってくれる?」

「えっ!!り、リモコンですか??」

突然背後から声をかけられて、驚いたせいで挙動不審な態度で声が裏返り突然慌てだす姿にさすがに裕介さんも何かに気がついたようでフフッと笑われる。

「もー可愛いな、七海ちゃんは。もしかして緊張してるの?いいよ、俺がとるから」

そう言いながら裕介さんがソファーの目の前のテーブルの上に置いてあるリモコンに手を伸ばした。

(え・・・・・・・)

時間が止まったような感覚に襲われるのも無理はない。
だって、裕介さんの身体が背中にあたり、後ろから覆いかぶさるようにしてリモコンを手にする。

(や、やばーーーーーい!!この体勢はっ!!心臓に悪い!!)

心の中で激しく叫ぶように私は開いた口をパクパクとさせる。
なるべく身体があたらないようにと何故か体育座りのような格好になってしまった私に裕介さんも「えっ」と驚く。

「ごめん、なんか・・・・嫌な思いさせちゃったかな・・?」

「い、いえ・・全然!!何にも問題ないですよ、私、この体勢が好きなんで・・・
気にしないで下さい・・!」

咄嗟にごまかした言い訳みたいな言葉が更に二人の間に沈黙を走らせた。

(ああーーー私の馬鹿。余計気まずいじゃないのよーー)

緊張感からやたらと暑くなってきたため、顔を手で仰ぎ息を吐く。

「な、なんか、あ、暑いですね。そ、そうだ!!私、何か飲み物持ってきます!!」

そう言って立ち上がろうとした寸前・・・


ぐっ・・・・

「・・・・!!!!」

咄嗟に手をつかまれて驚き振り返る。

「俺と二人きりになるの・・・嫌・・・?」

悲しそうな顔をしながら問いかける裕介さんに言葉が出ない。
裕介さんの握る手が熱くてこんな状況だからか、何かとんでもなく勘違いをしてしまいそうだ。

「あの・・・嫌じゃ・・・ないですけど・・・」

その先に何を言えばいいのか分からず私は黙ってしまう。


そうこうするうちにその掴まれた手が勢いよく引っ張られると、気が付けば裕介さんの胸の中だった。

(えっ、えっ・・・ちょっ・・・・どういう?)

もう何がなんだかわからなくて、私は完全に硬直してしまう。

「ごめん・・・・俺・・・・」

(何・・・何・・・もうしかして・・・この展開は・・・)

こんな時間にこんな体勢で言われる言葉の予想をいくつも連想させて頭がパニックになりかけたそのとき・・・・

ドンドンドン・・・

「裕介さーん、ちょっといいですか?」

「!!!!」

突然の部屋のドアを叩く音と、声に我に返った私は咄嗟に裕介さんの胸を突き飛ばすようにして離れた。

そしてその直後に部屋のドアが開かれ、訪問して来た人物と目があう。

「・・・・・何やってんだ・・・・?お前・・」

突然の訪問者は清田さんだったのだが・・・・明らかに不審がる。
それもそのはず。
裕介さんの胸をいきおいよく突き飛ばし、その拍子に自分が後ろに倒れこむようにしてひっくり返ってしまったのだ。
そして運悪く、清田さんの足下で仰向けでばんざいのような格好をした私と目があったのだから無理もない。


この光景ならば、むしろまるで私の方が誘っているかのような光景だ。
断じてそんなつもりも、気持ちもないのだけれども・・・・。


「あ・・・・いや、これは・・・・体操をしてまして・・・」

「・・・・・・」

明らかに質問と答えがあってない。
そう後悔したのも時既におそし・・・。
まるで変なものを見るかのような目で清田さんに見られながら、冷や汗まじりで
ゆっくりと起き上がる。
と、同時に清田さんと目があう。

「お前・・明日打ち合わせだろ・・・。遊んでないで早く寝ろよ!」


何故かその言葉と清田さんのぶっきらぼうな態度がこの部屋から抜け出す助け舟を出されたような気がして、私は思い出したかのように大げさに驚く。

「ああ!!そうだった!!明日、打ち合わせでしたよね?それは早く寝ないと!!
清田さんの会社に迷惑はかけられないですもんね!!」

明らかに棒読みな台詞と態度で私は清田さんが開けてくれたままのドアから急いで
部屋を飛び出した。

が・・・・

とりあえず、お礼と謝罪だけは一応同じ家に住んでるわけだし気まずくなるのも嫌なので
一旦引き返すと裕介さんに向かって頭を下げた。

「今日はありがとうございました。じゃ、じゃぁ、お先に失礼します!!」

そこまで言ってにっこりと微笑むと裕介さんの表情も見ずに踵を返したのだった。

残された裕介と創一は互いに顔を見合わす。

「あーあ、創ちゃんのせいで、七海ちゃん帰っちゃったじゃない。せっかく今からいい感じだったのにさー。」

「はぁ?俺のせいですか?・・・・・ってか・・・・裕介さん・・・・。
あんまりあいつのことからかうの止めてあげて下さいよ・・・・。」

ぼそっと言う創一に裕介は一瞬だけ真顔になったが次の瞬間にはいつも通りの笑顔で口を開いた。

「何々創ちゃん、もしかしてヤキモチ??やだなぁ〜冗談に決まってるでしょ!
創ちゃんのお気に入りの七海ちゃんを俺が横取りなんてしないって〜」

「はっ!?そ、そんなんじゃないっすよ!!お、俺はあいつが勘違いしてんじゃねーかと
思ってそうだから・・・・」


慌てふためく創一を見ながら裕介の瞳が真剣な物に変わる。

「でも・・・・」

「え・・・・?」

裕輔は立ち上がり、創一の手にあったDVDを受け取りながらにっこりと微笑んだ。

「俺も七海ちゃんのこと大好きだから負けないよ?」

「・・・・!!!!!」

突然の宣戦布告宣言に創一も開いた口が塞がらない。
驚いて言葉も出ないでいる創一をよそに、裕介は時計を見ると何かを思い出したようで
創一の背中をぐいっと押すと自分の部屋から外に出す。

「ほらほら、早く寝ないと明日大事な打ち合わせあるんでしょ?それじゃ、おやすみ〜」

「えっ・・・・ちょっ・・・」

創一がようやく何かを言いかけた時には既に裕介の部屋のドアは閉ざされていたのだった。

「・・・・本気かよ・・・」

誰もいなくなった廊下で一人創一だけの声が響いた。

「あーーーー!!冗談じゃねぇ、勝てる気がしねぇだろうが・・・・」

頭をガシガシとかいて独り言のように叫ぶと、創一も自身の部屋に戻っていった。


そんなこんなで、こうしてこの複雑な気持ちのまま私の小鳥遊邸での生活は繰り広げられて行くのだった。



つづく★

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