ボルテージ♪ルームシェア素顔の彼♪

□ルームシェア素顔の彼♪B
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ルムカレ♪ 素顔の彼・・・

「突然のハプニング」

大きなプロジェクトも一段落し、お風呂上りに私はささやかな自分へのご褒美にサワーを片手に中庭の縁側に腰掛けた。

お風呂上りのこの一口が何ともいえない程の至福のひと時を感じさせる。

「ん〜〜〜〜〜っ!さいっこう・・・!!」

そう、誰にもいない事をいいことに、キャミソールにパーカーを羽織り完全オフ状態の顔で大きくぷはぁーっと息をはく。

「ぷっ・・・・」

(ぷ・・・・・?)

そこへ突然聞こえてきた謎の噴出した音?らしき音に咄嗟にまさか、こんな叔父さんくさい所を見られてしまったのかと思い後ろをふりかえったり、キョロキョロとしてみる。

「お前ほんとオッサン化してるよなー」

そう言って突然、ハンモックからむくりと姿を表したのは清田さんだった。
その意外な場所からの登場に勿論、ええっと私自身も大きく口を開ける。

「な、なんでそこから?文太さんの場所ですよね、そこ。」

本当に驚いた顔でそう言えば、途端に不機嫌な顔付きに変わり、ハンモックから降りるとこちらにズンズンと近づいて来る。

「お前に関係ないだろ。だいたい、文太の場所とか誰が決めたんだよ。俺だって星見たい時位あんだよ!」

(え・・・・っ!?ほ、星??清田さんが・・星?清田さんと・・・星・・・)

「ぶっ・・!!!」

清田さんの発言をぐるぐると頭で想像してしまい、その発言した人物と求める物にあまりにも不釣合いが生じて、思いっきり噴出す。

「お前・・・今、笑っただろ・・・」

「い、いえ・・・全然!!そんな、清田さんに星とか似合わないなんて思ってませ・・・あ!!い、いや、そ、そう!!素敵だなぁ〜って思って!!」

ついつい本音を言いそうになって、慌てて笑顔で言い直すが不機嫌さはまして気が付くと頭上から睨みつけられる。
もはや蛇に睨まれた蛙の状況だ。

「・・・・っ!!!」

そこで何かに気が付いた清田さんが突然目を見開き、顔を赤くして後ろに後ずさる。

「えっ・・?清田さん・・?どうしたんですか・・?」

あまりの不自然な動きに私も何事かとサワー片手に立ち上がり、近づこうと足を踏み出す。

「ちょっ・・・お前、近付くんじゃねぇ・・!!」

両手を大きく振りながら、慌てて赤い顔で逃げようとする。

「なっ・・!なんですか、突然!!ちょっと清田さん!!」

あまりの拒絶にこちらもムカついて来て、サワーを縁側に置くと、逃げる清田さんを追うようにして追いかける。

「ば、馬鹿!何でついてくんだよ!!ついてくんな!!」

「え、何ですか!理由言わずに逃げるなんて卑怯じゃないですか!!」

そう言って私も腑に落ちないこの展開に段々苛立ち、意地でも追いかけてやろうと小走りで清田さんの後ろを追いかける。

そこへ偶然、カラカラと音がするとハンモックで一休みする為に中庭にやって来た文太さんが私達の可笑しな様子に気が付く。

「ん・・・?何してんの?鬼ごっこ?」

「はぁっ?ちげーし!!俺は部屋に戻るんだよ!!こいつが勝手に追いかけて来るんだろうが!!」

「はぁぁぁ?何んですかそれ!!そっちが勝手に逃げ出したんでしょ!!」

・・・・と、まぁ、喧嘩の理由がよくわからないまま二人で言い合いを始めてしまう。

文太さんはと言うと、特にまぁ、この光景に見慣れているのか、欠伸をしながら私の横を通り過ぎる。

と・・・・そこで文太さんの視線が私に戻る。

「あ・・・七海・・・」

「へ・・・?」

突然真横から文太さんに指差しをされ、その指差された自分の身体の方向に視線を合わせる。

(な、何何・・・?なんかついてるの・・??え、服?・・後ろ前反対?裏表逆とか・・?)

自分に向けられた指差しに慌てて自分の服装を手で確かめたりしてチェックするが何の事か分からないでもう一度文太さんを見る。

「違う・・・。それ、ストラップっていうの・・・?片方外れて半分はみ出してるよ・・」

(・・・・・え・・・・)

そう言われてまさか、そんな筈は無いと思いながら視線を自分のキャミソールの中へと移す。
と、そこには言われた通りブラのストラップが片方だけ外れたせいでカップが下に下がり、おまけに今日に限ってカップが浅いブラをつけていたせいで、そこから胸の先端が見え隠れしている状態であった。いや、もう「こんにちは」状態だ。
そりゃあ普通にしてれば気が付かないかもしれないが、さっきみたいにしゃがんでいれば、上からもろ丸見えだったのかもしれない。

いや、でも何で文太さんは気付いたの?
も、もしかしたらキャミからそこが飛び出てて誰が見ても分かる位に浮き出てたのかも!!!

色々な思考が巡る中、数秒してから私は大声で叫んでしゃがみこんだ。

「きゃぁぁぁぁぁ!ウソーーー!!」

(最悪、最悪、何でこんな時に、しかもこの二人共に見られちゃうのーーーー!!!)

声に出せない感情を泣きそうになりながら私は青ざめたまましゃがみこんで立ち上がれない。

「・・・・・でも見てないから。」

そう言って文太さんは気にする様子も無く、ハンモックに入り込む。
その一言にさえも、喜んでいいのやら、むしろ興味をそそられもしないお粗末な胸だったと言われた様で悲しくなる。

そんな状態で項垂れていると、突如ふわりとあたたかい物が身体にかけられるのに気が付いて顔をあげる。

「んなとこに座ってねぇで、さっさと部屋戻れ。それ・・貸してやるから・・」

気が付くと、清田さんがいつも着ているジャージを頭から被せられていた。
正直、時折こうして見せる優しさにいつも私はドキドキさせられるのだ。

(なんなのよもう・・・さっきは逃げたくせに・・・)


そして、そそくさと有難くジャージを借りてなんとかそこを完全密封状態にする。

「・・・・・ありがとう・・・」

清田さんに見られてしまったという羞恥心からまともに顔も見れずに下を向いてぺこりとだけお辞儀をする。
勿論清田さんも気まずいのか、「おう」とだけ返事してさっさと部屋に戻る。

残された私はというと、他に誰にも見られなかったかと辺りを再度キョロキョロと見渡し、他は誰にも今の状況を見られてなかった事に安心して部屋に戻る事にした。

そんな中、部屋へ戻る途中であまり会いたくない人物と出くわす。

「あれ・・・・?七海ちゃん、それ創ちゃんの服だよね・・?」

「あ・・・・祐介さん・・!!あ、こ、これは・・その・・・。」

返答に戸惑う私をまるで観察するように見ると、祐介さんはニッコリと笑う。

「何、何?もしかして・・・そういう仲になっちゃったの?駄目だよ七海ちゃん、抜け駆けは禁止!!じゃぁ、今度は俺の服も貸してあげるから着てね?」

(・・・さすが祐介さん・・。ノリが軽いのに冗談でもなさそうなとこが怖い・・)

いつもの調子で祐介さんはニコニコと笑顔でそう言う。
勿論、祐介さんの場合は半分冗談な事が多いので交わすのは特にどうってことない。

「ははは・・・。そ、そんなわけないじゃないですか!さっき服に泥つけちゃって、たまたま借りただけなんです。で、では・・おやすみさない!」

そう言うがやいなや、私は祐介さんの返事も待たずに部屋に向かって走って逃げたのであった。

あまりの動揺振りで自室へ帰った七海の姿を見ながら祐介はふふっと微笑む。


「分かりやすいなぁ〜。本当。邪魔するつもりなんてなかったけど、じれったいとなーんか、逆に邪魔したくなっちゃうんだよねー。」

そう言って祐介は思い出し笑いをしながらアトリエへと向かって行ったのであった。

小鳥邸での生活ももうとても一ヶ月位しか住んでないとは思えない程馴染んでいる今日、
恋の予感はちゃくちゃくと迫って行っているような日々であった。

つづく★

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