大奥への扉

□表と裏 7 〜日向vs永光 編 〜
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表と裏 7 日向VS永光 編

突然の日向の登場に驚いた家光は、何とかこの状況を説明しなければと必死にこれまでの「経緯」たるものを考えようとした。

「あ、兄上!!申し訳ありません。こ、これは私の不注意です。その、足をくじいてしまいまして・・・・・そう!浴室で!!」

「・・・・・浴室だと?」

咄嗟の家光の慌てふためくような演技に再び日向の眉間にしわがよる。
家光の背中からなんともいえない程の冷や汗が流れる。

「・・・・・しかし、湯殿係りは夏津殿のはずではなかったのか?実に怪しい」

「!!!!!」

日向の一言により、再び微妙な空気が辺りに流れる。
家光は、お前も何とか言えと、永光に視線を移す。
が、当の永光は先ほどの表情とは変わって、何時もどおりの穏やかな表情でニコニコと微笑を家光に返す。

(なっ・・・・!!こやつ・・・・!!もとはといえば、こやつのせいだというのに、こんな状況下でよくも笑っていられるもんだ!!)

あまりに腹が立った家光は、足を痛めたことも忘れて永光の腕からするりと身をすべらし
降り立った。

「!!!!上様?」
「家光!!!」

しかし、当然ながらも着地失敗しその場に崩れるようにしゃがみこむ。
突然の家光の行動に驚いた永光と日向が同時に家光のもとへと駆け寄る。

が、同時に互いの視線がぶつかり、見えない火花が飛び散る。

「永光・・・・。お前はもう、下がれ。ここまでご苦労であった。後は私が緒形のもとへと送り届ける故、部屋へ戻れ。」

低い声色で日向が家光の前へ立ちふさがり、これ以上近寄るなとでも言いたげな視線を送る。
しかし、永光もここまで来て後がひけないと言いたげに恐ろしい程の微笑みを送る。

「いえいえ、病み上がりの日向様にそのような事をさせるわけにはいきません。
上様もこの様子じゃ一人じゃ歩けないでしょうし、支えて緒形殿の場所まで行くには
お身体に差し支えましょう。何かあっては大変です。ここは、ご心配なさらず、どうぞ
寝所でお休み下さい。」

負けじと永光は前へ出て、家光にこちらに来るように目で合図を送る。

「おい・・・。貴様、この私が病みあがりだからと体力が無いとでも言いたいのか?
この私を馬鹿にするとは・・・余程、大奥から追放されたいようだな。」

「そんな、とんでもないことでございます。この私のような者が日向様に楯突こうなど
滅相もございませんよ。しかし、本日は確か午後から崇源院様と茶会に同行なさるご予定のはずでは?日向様の婚儀も間近に迫っている今日、欠席されては崇源院様の顔に泥を塗ると同じ行為だと思いますからね。」

「・・・・・!!!」

(・・・・こ、こんな状況で兄上を怒らせてどうするんだ!!この、馬鹿永光!!)

日向の顔付きが一層、どす黒いものへと変わったのに気付いた家光は、これ以上は
見ていられず、瞬時に立ち上がり咄嗟に日向の着物を掴む。
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