明鏡止水

□砂の記憶
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カキンッ!!


金属音が聞こえる。
そして目の前の光景は目をふさぎたくなってしまう一族の悲惨な状態。


「ふざけるな!!なぜこんなことをする!!?」


零の父上の声。


「お前の一族は悪いが…、お前の一族は私の砂には邪魔でしかないのだ…」
「自分が風影になったとたんそれか!!俺たちの恩を忘れたのか!!」
「忘れてなどいない…。だからこうして私が直々に手をくだそうとしているのだろう…」
「失望した…ッ」


その言葉が幕をきった。


「フフ、始まっちゃったわ」
「あ、あの母上…」
「ん?なぁに?」


笑顔で言う母上には今の状況がどれだけ悪いか、なんて分かっていないのかもしれない。


「なんで笑ってらっしゃるのですかッ!!?今の状況はッ」
「知ってる。今の状況はね、私の好きだった人と今の好きな人が争っている状態よね!」


両手を真ん中で合わせて、嬉しそうな悲しそうな顔でいう。

その間にも泉一族は消えていく。


「結構昔の話なんだけどねー、私はあの人が好きだったの!!」


視線を母上の見つめるほうに向ける。
そこにはこの戦いの首謀者ともいえる風影様。
自分の夫は眼中にもないようだ。


「政略結婚って知ってる?」


零はまだ5歳。

政略結婚なんて単語自体聞くのが初めてだ。

無言で首をふる。


「政略結婚ってね偽りの愛さえあればいいの」
「…母上は私も父上も愛していないのですか…?」
「だまってききなさい!!」
「は、はい!」


いつもの雰囲気と違う母上にビクっと身が震える。


「だから、あの人への愛なんていらないと思ってたんだけどね、愛しちゃったんだ」
「どうい「今のあなたに発言権なんてないの!!」
「わ、分かりました!」


そう返事をすると満足そうにうなずき、話を再開する。


「だから私はこの戦いから逃げることはしないわ」
「ぇ・・・」


そのときの母上の顔は強くてりりしかった。


「じゃぁ、お休みなさい!いい夢みなさいよ?」
「はい?なにを言って…」


ぷつん
と緊張した意識がとぎれた。
今の零に意識はない。


風影が母の前にあらわれる。
それを母は冷たい表情で見下すようにみる。


「はぁ、あなたは風影になったのね」
「…相変わらず、お前は甘いな」
「べつに…、私はこの子の前では別の私を演じきっていただけ」
「では本題に入らせてもらう。どうする?お前が泉一族につくというのなら私は容赦しない…」
「えぇ、容赦なんていらないわ。今の私は泉一族の人間よ」
「気高い人間は早死にするぞ」
「早死にもなにも今ここであなたに殺されるのだから問題ないわ。まぁ、ひとつ心残りがあるといえばこの子ね」
「……」
「育ててくれないかしら?」
「……」
「この子は私とあの人の血を受け継いでいるのよ?あなたが納める砂にとって戦力になるのは間違いなしでしょう?」
「…そうだな」
「フフッ、ありがとう。そういうところ大好きよ」


妖艶に笑った。
 

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