novel
□益母草
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「やっと着いた…」
「クソッ、当分右手使えないな」
「もっと頑張って避ければよかった」
「そんな悠長なコト言ってられないケド」
「うっし、止血完了!」
血みどろで帰ってきたオレは紫苑の座るソファーに腰掛ける。
途端、紫苑は膝の上に広げた本から目を離さないまま移動していった。
最近見つけた救急箱で手当してる間も全くの無関心。
…ねェ、何でオレを見てくれないの?
ローテーブルの向かいの長椅子に収まった紫苑を見て思う。
オレはキミのタメだけに動いているのに。
なんでわかってくれないの?
『よき願い』
『私にとってのそれは貴方に憎悪を抱かない事』