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□truth
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何もない部屋でオレは跳ね起きた。
イヤ、「何もない」は言い過ぎか。少なくとも家具は一式揃っている。ないのは生活感だ。
そして跳ね起きた理由は簡単、悪夢を見たから。
「――」
溜め息を吐いて片手で顔を覆う。あまり夢見のいい方ではないが、こんなタイプの夢は初めてかもしれない。実際にあった出来事が出る夢は。
「それにしたって…」
何故あの日を今更?


――降りしきる雨の中、オレは荘厳な屋敷の前に立っていた。傘を差していても体は濡れていく。風都名物である風が仇となった形だ。珍しくキチンと着込んだ紺のブレザーには斑に染みができ、昨夜丁寧にアイロンを当てたスラックスは裾がビショビショ。
「ツイてねー…」
一人ボヤくと、隣からニーと声がした。園咲家の飼い猫、ミックだ。
「ウワ、オマエもビショ濡れじゃん。家ん中入るの?」
心配してやったのに、ミックのヤツ無視しやがった。悠々と去って行く背中と尻尾に石でもぶつけてやりたい。…実際やったら大変なコトになるからムリだけど。
「ハァ…」
盛大な溜め息と共に意を決して、オレは園咲邸の敷地に足を踏み入れた。
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