ハイキュー!!

□ツッキーはモテます。
1ページ/1ページ




「山口くん、これ‥」

「あ、うん‥」


夕暮れの教室。
女の子から渡される手紙。
誰だってドキドキするシチュエーションだと思うのに、


「月島くんに渡しておいてほしいんだ‥」

「わ、かった‥」


正直このような機会にはもう慣れた。
高校に入ってから今に始まったことではないし、小学生の時からツッキーはモテていたし。
何よりいつも隣にいる友だちである俺に渡してもらえば自分で渡すよりも受け取ってもらえる確率が高いとか何とか。
そんなことを昔、クラスの友だちから聞いたことがある。

みんなツッキーのことを何だと思っているんだろう。

手紙を渡すよう、頼まれた女の子は俺に手紙を託したあと、そそくさと帰っていった。
こんなことしてツッキーが喜ぶとは思えないけど、


「嫌だとは言えないもんなぁ‥」


正直、ツッキーが女の子から告白される度に心のどこかでヒヤヒヤしている自分がいる。
何でかは分からないけど、ツッキーだって一人の男の子だし、いつかは女性と結婚だってする。
たまに思うのは、その時にはもう俺はツッキーの隣にはいないこと。
考えないようにはしているけど、ツッキーの隣が俺じゃなくなってしまうのは凄く寂しいことだと思う。


「はあ‥」

「大きい溜息」

「おわああ!ツツ、ツッキー!!」


突然、背後から声が聞こえてきたため、咄嗟に手紙を背後に隠してしまった。
だめだ、これはツッキーのためにあの子が一生懸命書いた手紙、なのに、


「いま、何か隠したデショ」

「エッ!や、あの、」

「もしかして手紙?」

「あ‥うん」

「‥‥やるじゃん山口、で?返事はどうするの?」

「ちがっ、これはツッキーの‥」

「え」


恐る恐る背後の手紙をツッキーに手渡すと、一瞬だけ安心したような表情を見せてくれた。
俺の勘違いかもしれないけど。
手紙もらって安心した顔するなんて、そんなに女の子がいいのかな。
納得するべきことだけど、どこか飲み込めない自分がもどかしい。


「‥手紙の人と、付き合うの?」

「付き合わないよ」

「そう‥‥えっ」

「僕そういうの興味ないし」

「そうなんだ‥」

「それとも何? もう僕の隣にいるのは嫌とか?」

「そ、そんなわけないじゃん!俺はずっとツッキーの隣にいたい!」


そう言うとツッキーは俺の頭を撫でてくれた。
強い力を与えられているわけではないけど反動で顔を俯かせると更にワシャワシャと撫でてくれた。
ツッキーはよく俺の頭を撫でてくれる。
俺はツッキーに撫でてもらうことが大好きだし、幸せとも感じる。
えへへ、と声を漏らせばツッキーがボソリと口を動かすように言葉を零した。


「うん、僕もそのつもりだから」


”覚悟しておいてね”と、ツッキーに耳元で囁かれてから、耳元が熱くて仕方ない!
これは一体なんの感情なのか、きっと恥ずかしくて熱くなっているに決まってる!
だって、ツッキーも、


「耳が赤くなってるんだから!」








 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ