I.W.ハーパー
□盗人
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翌日、2人はいかにも大金持ちそうな家の前に立っていた。
「こーゆう家は大体見せびらかすために、屋上にただ置いてあるんだよな」
小屋に鍵かけてしまっておけばいいのに、と呟きながら軽々と塀を越える。
「だからこそ簡単に盗れるんでしょう?」
アダムに続いて塀を越えながらクリスが言う。
「まっそーだけどな」
2人は近くの窓に走り寄ると、クリスが手際よく鍵を外す。
「それにしても、外に警備がないなんて不用心なところだ」
クリスが周りを見渡しながら言う。確かに、少しおかしい。何もなければいいが。
「こっちだ」
アダムが階段の下にスペースを見つけ、クリスを呼ぶ。
「着替えは?」
「あるよ」
クリスが鞄から取り出したのは警備員の服だった。
「これならばれないだろ」
変装することで自由に家の中を歩き回れる。
「行くぞ」
階段を登っていく─
2階、3階、順調に誰にも会わず通過できた。
あと少しで屋上というところで警備員がウロウロしているのに気づいた。
「よぉ、ご苦労さん」
「ん?あぁ」
警備員がアダムを振り返る。
「お前のところの警備はどうした?」
何やら怪しい目つきで見られている。変装に不備でもあっただろうか。
「だ、旦那様に用を言いつけられたんだ」
警戒心を解かねばと、主人を話題にだす。大方はこれで大丈夫なのだが…
「そうか。ならこんな所でグズグズしないで早く行け」
うまくごまかせたようだ。
「そうだな」
警備員はそう言うとスタスタと見回りに戻っていった。
「ふぅ」
アダムはその背中を見送ると、ほっと息をついた。
「兄さん、今日は何かあった?いつもならもっとうまくやるのに」
「いや、別に…」
2人は残りの階段を登り、屋上までたどり着いた。
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