I.W.ハーパー
□盗人
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「クリス、飯だ。飯」
1人の青年が、ソファーに寝そべりながら言った。
「そんな事言っても、お金ないよ」
返事をしたのは、向かい側で読者をしていた青年だ。ソファーの青年よりはいくらか若く見える。
「しょーがねぇな。ひと仕事してくるか」
頭をぼりぼりとかきながらだるそうに起き上がった。
「どこにする?」
「この間、エジプトの黄金がどうとか言ってなかったか?」
アダムが確認するように、クリスを見る。
「そういえば…でもどうやって行くつもり?」
クリスの言葉にアダムは少し考えるような仕草をする。
「よし、飛行機を拝借してこよう」
手をぽんと叩いて立ち上がると髪を緩く結びやる気をみせた。
「道は分かるの?」
「………」
黙り込んでしまう。アダムは方向音痴なのだ。それもとてつもなく酷い。
「いいよ、僕が航路を教える」
あきれたようにクリスが呟いた。
「さっすが、クリス」
対するアダムの表情は明るくなる。
「まずは計画を練らないと」
二人は頭を突き合わせて、話し合いを始めた。
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