壱
□彼奴+俺×感情=
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あれから三ヶ月が経った。
「シカマル―、お客さんよー!」
部屋にいたら、母親がそう叫ぶのが聞こえた。
誰だ?
チョウジやいのなら、そう言うはずだ。
面倒くせーな、誰だよ、わざわざウチにまで来るなんて物好きなこって。
だらだら玄関に向かうと、そこには見慣れた桜色の髪と緑の瞳(メ)の持ち主がいた。
「久しぶり…」
サクラが、か細い声で言った。
居間で向かい合うオレとサクラ。
自分がいたら話しにくいだろうからと、母親は外出した。
サクラは、瞳を自分に出されたカップに向けたまま黙っている。
オレは、会話を促すこともなく、意味もなくカップをスプーンでかき回していた。
サクラが、意を決したように顔をあげた。
オレは、手を止めてサクラを見る。
瞳が合う。
サクラは、すぐに俯いてしまった。
久しぶりにサクラの瞳を正面から見た気がした。
幸せに溢れていると思っていた緑の瞳は、不安そうに揺れていた。
サクラの瞳は、オレに何を伝えたいんだろうか。
そう思ったけど、らしくない気がして、考えるのを止めた。
そんな時、不意に昔の事を思い出した。