壱
□彼奴+俺×感情=
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サクラは、何も答えない。
「何にもしてやれねーと思うけど、聞くだけ聞いてやるぜ?」
オレは、サクラを正面から見た。
サクラは、瞳を伏せたままで。
カップを握り締めて。
心細そうな肩をしていて。
オレは…
「シカマルに会いたかったの。ずっと」
サクラの瞳は、オレに向けられた。
その瞳が映してるのは、幸せでも嬉しさでも不安でもなくて。
オレだった。
今にも泣き出しそうになりながら、必死に涙を抑えてオレを映してる。
さっき湧き上がった感情が、体中を支配する。
奪いたい。
サスケからサクラを奪ってしまいたい。
でも、その後どうするのだ?
熱くなれないのがオレの長所であり、短所。
頭だけはこの感情じゃなくて、理性が支配していた。
冷静に問いかける理性。
サクラはそれで幸せになれるのか?
サクラは、それを望んでいるのか?
冷めた理性が感情の支配を覆す。
「結婚する奴が何馬鹿なこと言ってんだよ」
合いたいのは一にも二にもサスケだろと、理性は続ける。
さめた理性は、サクラをあしらうことを選択した。
「…そうだよね…何馬鹿なことしてるんだろうね、私」
サクラは、下を向いて勢いよく立ち上がった。
「ごめんねシカマル、変なこと言ったりして。あっ、もう失礼するね。おばさんに紅茶美味しかったですって伝えておいて。それじゃ…」
サクラとすれ違った時、何か冷たいものがオレにかかった。
…涙…?
「サクラ…?」
何で泣くんだよ。
お前が好きなのは、お前が選んだのはサスケだろ?
違うのかよ……