捧げ物

□1331HITキリバン小説
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Holiday〜幸せはこんなところにある〜


「…先輩?」


レッドは、ボーッと家の窓から空を眺めていた。

その瞳は風に吹かれて流れて行く白い雲だけをただただじっと追いかけている。


「ん…ゴー、どうかしたか」


どうかしてるのはそっちだと思わず言いそうになり、ゴールドは慌てて別の言葉を探す。


「先輩、疲れてるんスか?」

「え…いや、そんなことないよ」


レッドは手を横に振り笑ってみせた。


「(…嘘つき)」


レッドに聞こえないくらい小さな声でゴールドはそう呟いた。


先輩の悪い癖。

無理に口の端だけ笑ってるけど、目は何一つ笑ってない。
きっと、また何か考え事でもしてるのだろう。
そう思うとゴールドは気が気でなかった。


何か先輩を元気付ける方法ねーかな…。


方法………。


「…そうだ!」


ゴールドはあることを思いついた。


「先輩!温泉に行きましょうよ!」

「温泉?」

「そう、シロガネ山の」

「いつ?」

「今度の日曜日にでもv」

「うーん…」


レッドは少し躊躇っている。


「いいじゃないスか?たまには」


温泉か…この頃はまったく行ってないな。


「そうだな…、じゃあ日曜日な」

「へへ、やった!」






そして、日曜日。




「わー、久しぶりっスね」

「そうだな」


二人は朝早くにマサラを出発し、お昼過ぎにはシロガネ山に到着した。


「風が少し冷たいな」


八月も終りに近いシロガネ山はマサラよりも涼しく風も少し冷たかった。


「先輩、さっそく温泉に入りましょうよ♪」


ゴールドはそう言うと一目散に駆け出した。


「あ、こら走るなよ!」


ため息をつくとレッドはゴールドの後を追って行った。






『チャポン』




「はぁー…気持ちいいっスね〜」

「ん…あぁ」


レッドは気のない返事を返した。


「あ、トンボが飛んでるっスよ先輩!」


温泉の回りにはあちこちトンボがたくさん飛んでいた。


「それ」


ゴールドは水面に止まっていたトンボの目の前で指をくるくる回してみた。


しかし


「あちゃー、逃げちまったか」


トンボは目を回す前に逃げてしまった。

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