Vol.1 「つくし、ヨモギ、たんぽぽの葉…」 サトシは籠の中を覗き込みながら、一つ一つの植物を手に取り眺めた。 「何をボケッとしているんだ、少しは手を動かしたらどうだ」 「い、言われなくてもさっきからやってるだろ!」 「ふうん、僕にはそうは見えないけれど?」 相変わらず嫌味ったらしい。 ほんの少し手を止めて眺めていただけなのに、この言い草だ。 「動かせばいいんだろ!動かせば!」 「こら、あんまり乱暴に扱うなよ」 雲一つ無い快晴とは言え、まだ寒さが残る午後の土手にしゃがみ込んで、二人は懸命にある物を採取していた。 「大体、つくしやヨモギはわかるけど、たんぽぽの葉っぱなんて食べられるのか?」 「何を言ってるんだ、アクさえ取れば煮付けでも天ぷらでも何にでもなる」 「へぇー」 「ほら、この籠が一杯になるまでちゃんと採る!」 「…一杯ってまだまだじゃん!」 「誰だい、“春って感じの食べ物が食べたい!”って騒いだのは?」 「うっ…」 シゲルの視線が痛い。 不意に、一時間程前の自分の姿が脳裏に蘇る。 「ま、もう少し頑張る事だな」 「はーい…」 本当に期待していた物とはちょっと異なるけど、たまにはこういうのも悪くはないかもしれない。 この状態では、見た目があまり良いとは言えないけれど、シゲルの腕にちょっと期待してみたくなる。 だって、俺の為だけに作ってくれるって約束したんだから。 そう思ったら少しだけ顔の表情が綻んだ。 終。 あとがき 春の拍手小説その1です。 ああ、これも長々と居座ってしまった(汗) そんなつもりはなかったのに…(・×・) とりあえず、何が書きたかったんだか自分でもよくわかりません(笑) |