短編

□峠のスペシャリストも(拍手4)
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年上(1コ上)設定
走り屋ヒロイン

お相手啓介




(ギャグです。許せないと思う人は読まないで下さい。笑って許せる人のみ読んでね。)


お題

「峠のスペシャリストも、○○では」







やっととれたGW。
そのせっかくのお休みが。
隣家の親戚の叔父に潰されるとは、夢にも思わなかったわよ!(怒)



両親が転勤で念願の悠々自適生活♪
自炊と中々仕事が忙しくて休みが取れないのが玉に瑕。

でもやっとGW中2日休みをGet!
さてどこにいこうかな〜っ!
と楽しみにしていたのに!


「ごめんね。助かるわ〜。」
「・・・・。」
叔母の宥めるような猫なで声に、無言で私はステアリングをきる。



「ブーッ!」
誰かが唾を吹きだすような音を立てる。
誰だ、うるさい汚い。

「ははっ!!おま、お前その格好!」

げっ!

「啓介!なんであんたがこんなトコにいんのよ!!」

同じ高校で1コ年下、同じレッドサンズのメンバーである高橋啓介。
その啓介が、私を指差しながら引き攣れたように笑い続けている。

チキショー。
啓介に取ったらこんなおかしいことは無いだろうと自分でも自覚はしている。

「S14に乗ってるお前が田植え機で田植えかよっ!ははっ、は、腹が痛ぇっ!」
「うるさい!これでも車がぽんと買えちゃうんだから!この田植え機!」
見当違いの啖呵を切った私に更に笑い転げる啓介。

そう、ステアをきったのは田植え機。
麦藁帽に肩にはタオル、長袖のシャツを着て。極めつけは黒の長靴を履いた私は。
どこから見ても農婦そのものだった。

叔父がギックリ腰で田植えが出来なくなったと叔母に泣きつかれ。
広大な田んぼの手伝いを叔母と私の2人でやる事に。
叔母は田植え機の運転が出来なくて。
あたし、田植え機乗った事無いんだけどとせめてもの抵抗を見せるが
車が運転出来るからと私が運転に回された。
ちなみに、上京中の叔母の息子は来るのが明日になるそうで。
チキショーっ、貴重な私の連休を返しやがれ!(涙)

「はっ、こんな笑える場面なんて滅多にないぜ。」
涙目の啓介。まだ笑ってやがる。

プチンと自分の中の何かが切れる音がした。
こうなりゃ、自棄だ。
「いい時に来たわね、啓介?」
ニターッと笑みを見せるとビビル啓介。

「な、何だよ。」
「あなた、私に借りが有った筈だよね、それも山程・。」
涼介さんに頼まれて高校時代切れたコイツの仲裁に何度走り回ったか忘れたとは言わせない!




「くそっ!通りかかるんじゃなかったぜ!」
不貞腐れる啓介。
「あははは・・っ!よく似合うよ啓介!」
今度は逆にこっちが笑う番。

レッドサンズのナンバー2が田んぼで田植え。
端整な顔立ちをしているだけに女の子に人気で追っかけが居るほどの啓介が田植え(笑)。
金持ちの医者の息子の啓介。
そんな事をしそうにない人物だけにギャップの差が激しすぎて爆笑するのを必死に堪えていた。

啓介にはあれやこれやで貯まった貸しが山・・とは言わないがかなりの数あった。
啓介の過去の弱みも沢山知ってるからねぇ(悪魔)。

それを半分に減らす事を条件に田植え機を運転代わって貰うのをお願いして(強請って)。
啓介は私のタオルと帽子を被りトラックになぜかあった叔父の長靴を履いて
田植え機を運転中(大笑)。

叔母は昼ご飯とって来ると来れ幸いと家へ戻っていった。
私は叔母の残していった帽子とタオルを被っている。
5月とは言え、紫外線は強い。

「てめえっ!何時までも笑ってると犯すぞ!!コラァッ!」
怒鳴る啓介の顔は真っ赤に染まっている。
その顔には「不本意だ!」という表情がでかでかと載っていた。

「くくっ!いや、ホント感謝してるよ!
やっぱり持つべき者は友達だね・・ってそこっ!
スピード出しすぎで曲がってる!!ちゃんとスジに合わせて走ってよ!
そこっ、やっぱりスピード出しすぎで苗が均等に植えられてないよ!バックバック。」
ぽんぽんと指示という名のクレームを出しまくる。
普段、峠で言われている事のお返しっ!

「田んぼの状態が悪くって走りにくいんだよ!くそっ!峠でもこんな悪路なんて
ねえよっ!」

「くくっ!そりゃ田んぼだもんね〜っ!」
平坦なように見えても泥の中。更に動けない叔父の代わりに慣れない叔母が運転して慣らした
田んぼ。田んぼの中はかなりの悪路と成り果てていた。


そうだ!いいこと思いついた!

カシャッ!
曲がって植えた苗の列を背景に啓介が田植え機を運転している所を携帯で撮った。

「峠のスペシャリストでも田んぼでは?」
というタイトルで写メールで同じ幼馴染の涼介さんに送信した。
涼介さんが苦笑する様が眼に浮かぶようだ(笑)。
「てめっ、今何しやがった!」
携帯を向けていたのに気付かれ、何をしているのか悟って
田植え機を止めて慌てて走り寄る啓介。

「ぷぷっ!もう、手遅れだよ!貴重なシーンだから、涼介さんに写メ送っちゃった♪」
悪戯が成功して超得意の私。
さっき、散々笑った罰だよ!


慌てた啓介の表情がスッと無表情に変わる。
やばい、本気で怒ってる?

「・・・なんで兄貴なんだよ。」
「へっ?」

意味か判らなくて問い直そうとした矢先、
唇を噛み付くように塞がれた。
「んぅ!」
離れようとするが、後頭部に手を回され動けない。
何度も唇を塞ぎながら角度を変えて口づけされる。
酸欠状態になり足がガクガクする。

カシャッ!
カシャッ!
「っ・・・ふぁ。」
ようやっと離れてくれた唇に思い切り息を吸う私。
ぐったりと啓介にもたれかかる状態の私に、啓介の満足そうな声が聞こえた。

「・・ふっ、撮れたぜ。」

「は・・・はぁ!?」
写メに写っていたのは。

角度を変えて写した2人の濃厚なKissシーン。


「ちょちょっと、何写してんのよ!あ〜っ!」
ピロロ〜ン♪
送信のチャイム。

送ったのは・・・
「ちょ、ちょっとーっ!なんで涼介さんに送ってんのよ。」
涙目の私に
「いつも兄貴の事ばかり追いかけやがって。何で兄貴にばかり相談するんだよ!」

「?。啓介に相談しても技術的な答え帰って来る訳ないじゃない。」
至極当然の真理にそのまま答えたら、頭をかきむしる啓介。



「俺は、お前の事が好きだ。愛してる。誰にも渡さないっ!
たとえ、お前が兄貴の事を見ていたとしても。
お前に触れるのも抱き締めて良いのも俺だけだ。」



言うが早いか啓介は更に私を抱きしめてくる。
く、苦しい。締め付き過ぎだよ啓介!

「 誰が涼介さんを好きだって??」

「兄貴と付き合っているんじゃなかったのか?」
誤解とわかったのか呆然とする啓介。
腕も締め付けるのは緩んできたので此れ幸いと離れる私。

「啓介で遊んで、写メ送るのは何時もの事でしょう?」
啓介はいじられ役、私と涼介さんはいじり役(笑)。

「兄貴追っかけてレッドサンズに入ったんじゃ。」
「レッドサンズがコネで入れるようなチームじゃないって事はあんたが1番知ってるでしょう?
確かに、素質あるって勧められたけど。涼介さんを追っかけた訳じゃない。」
こいつは今まで私が涼介さんを好きだって誤解してたって事?

でも・・・。
「オマケに何よ、その告白。」
素直じゃない私。
「TPO考えなさいよ、バカっ!。周りの事も考えて喋ってよもう、信じられない!」
言い捨てると啓介を振り返りもせず田んぼから道路へ急ぎ足で抜け出す。
たぶん、私今顔真っ赤だ///。

「えっ、あっ!」
ようやく回りに気が付いた啓介。

「すげ〜。」
「ええのう〜若いもんは。」
「私らに構わず告白続けられたら良かったのに。」

周りの田んぼのあちこちで夫婦、老人、子供が啓介を見ていた。

期間はGW真っ只中。
この期間に田植えをする農家は沢山いるのだ。
結構な見物人に囲まれた啓介は赤面する。

「お前ら、見てんじゃねえよ///。おい、返事は!!」
こんな所で言えというのかこの馬鹿はっ!

「知らないっ、啓介のバカっ!その田んぼと左側の田んぼ後3枚やんなきゃ承知しないからね!」
畝に立って叫ぶ私。

「今、お弁当持ってくるから、出来てなかったら承知しないから!」
絶対、これ明日には近所中の噂になっている事だろう(泣)。



真っ赤な、恥ずかしさ満点の顔で叫ぶ彼女。
告白に肯定も拒絶もしなかった。
これは、脈があると言う事だろうか?

「もう、誰にも触らせない。」
こんな所へ置き去りにされたのだ、それなりの返事をしなかったらどうなるか
見てろよ。
ふわっと肩に掛けたタオルから甘い匂い。
あいつの残り香だろうか
「とりあえず、今夜は寝かさないからな。覚悟しろよ。」
啓介はその後を思って心からの笑みを浮かべた。


兄貴の事が誤解だった以上、遠慮はいらない。

  一刻も早く自分の物にして.
  誰も割り込めない位に愛して。
  余所見をさせない程縛り付けてやる
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