中編・短編

□悪戯悪戯
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「Trick or treat(お菓子くれなきゃ、いたずらしちゃうよ)!」


……止めて欲しい、この沈黙。


「……は?」


鋭い、痛い視線があたしに突き刺さる。


「えっとー…。お菓子くれなきゃ、いたずらしちゃうよ?」


勢いで言ったもの、やっぱり恥ずかしくなって思わず首を傾げる。


「お前、アホか。いくらバカな俺でもそのくらいわかるわ!」


「はい、すみません」


「それに、アホっ!お前の目、パンダみたいやで」


「パパパ、パンダって……」


今日は10月31日。所謂、Halloweenってやつ。


魔女イメージして小悪魔メイクしてみたのに、パンダって。


コイツ、絶対に許してやらない。


「で、達也。お菓子くれないの?」


「お菓子って、俺男だぞ?女みたいにいつもお菓子持ってねえっつーの。
つーか、俺。佳奈にならイタズラ、されてもいいよ?」


「な……なに言ってんのよっ!!!」


「Trick or treat!
佳奈、お菓子くれよ。」


「なんであたしが!!?」


「良いから。」


ないならキスで良いよ、なんて言って達也は笑う。


「……、はいっ!お菓子あるよー。」


「なぁんだ。」


「え?」


「お菓子ないから、キスかと思った。」


余裕そうに笑う達也に、板ガムを差し出す。


「どーぞー」


「さんきゅな。」


達也は、佳奈の差し出したガムを引いた。













―――――バチンッ



「いってー…」


「あははははっ!達也のバーカ!!」


佳奈が使ったのは、昔ながらのあのおもちゃ。

ガムを引くと、指が挟まれるあれだった。



「Trick or treatって言ったじゃない。達也、お菓子くれてないでしょー?」


佳奈は、達也に怒られる前にその腕からするりと逃げ出し、笑った。







〔fin.〕




*air of romance*
ぁゃ

嘘つきキッス様へ





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