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□メリーゴーランド・ラブ
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(ヒロイン←平助)




回り回って、何処まで行くの?

同じ所をぐるぐる回る私たち

まるで
自分の尾を追う犬みたい!








「今日も綺麗だね」

「はいはい、冷やかしなら出ていって下さい」


 来る度来る度 愛の言葉を囁いていくこの客にはほとほと手を焼いている。砂糖菓子よりも甘い言葉はいったいどこから湧き出てくるのだろう。


「あぁごめん、この大輪の花のように美しい君にそんな陳腐な形容詞は‥」

「一名様おあいそうでーす!」





 この人が此処に初めて訪れた時の顔は一生記憶に残るだろう。
 動くことを忘れたかのように静止して、頬が──今思い出しても こっちが恥ずかしくなってしまうような表情だったのだ。

 あれが、人が恋に落ちた瞬間の顔だったのだろうか。


 あの日から彼は、甘い言葉を囁きに私の店へ毎日来るようになった。



「‥でも私は一目惚れなんて信じないから!」


 一仕事終えて自室に戻り前掛けを床に乱暴に叩きつけると、うるさい!と父親に怒られてしまった。
 ふてくされて布団に潜り込むと、もやもやとした気持ちが湧き起こってくる。


『第一、あの人はあんなにいつも笑顔を振りまいて』

『きっと女好きなんだわ』

『それか物好きなのね』

『じゃなきゃあんな素敵な笑顔私になんて』

『いつもにこにこ、幸せそうにして』

『油断するとこっちまで頬が‥』


 って、あれ‥?


 思考が辿り着こうとした有り得ない事実に、一瞬言葉を失う。

 まさか、まさかまさか‥!!


「っそんなことあるわけないじゃない!!」


 馬鹿みたい!と吐き捨てて思い切り布団の中に潜ると、もうこれ以上何も考えなくてもいいように早く眠りに就こうとした。

 けれど、早く眠ろうとすればするほどあの人の笑顔が頭の中を支配して、一向に安眠が訪れそうにはなかった。








「なんか今日は随分疲れてそうだね」


 寝間着から着替えて店に出れば、いの一番に親に言われてしまった。結局昨夜は一睡もできなかったのだ。


「‥暖簾あげてくるね」


 言って、とぼとぼと戸口に向かう。とぼとぼと歩いてはいたけど、沸々とこみ上げてくるモノがある。


──ろくに眠れないのもあの人のせいだわ!

──毎日毎日同じことの繰り返し

──核心に触れないから前にも後ろにも進めやしない!

──今日こそ文句を言ってやるわ!!


 そう意気込んで戸に手をかけて一気に開ける、と


「「あ」」


 待ちかまえていた件の人物と、まさかの鉢合わせ。
 意気込みとは裏腹に心の準備など毛頭も出来ていなかったらしい。ドキドキと心臓が破裂しそうな勢いで脈を打つ。


「‥ぁ、あのねぇ‥!」


 おっかなびっくり必死にさっきまで頭の中に広げられていた文句を並べてみようとすれば、遮るように握られた手のひら。

 ん? 握っ‥





「好きなんだ」

「え?」




 堂々巡りから抜け出したのは、赤い顔をした──でも真剣な目で真っ直ぐ見つめる──貴方の方からだった。









メリーゴーランド・ラブ

(いつの間にか)
(螺旋状に上昇してたみたい)

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