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□壊れたラジオから聴こえる。
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思うんだ。

俺がこの世に生きた意味は
あったのだろうか、と








れたラジオからこえる






 ちっぽけな命が今終わる。


 この大きな世界で

 この大きな時代のうねりの中で


 余りにも小さい存在が、今。


 思うんだ。

 俺がこの世に生きた意味はあったのだろうか、と。


 霞む視界の中に、“何か”を求める。

 どうか、どうか、

 教えて欲しくて、

 壊れかけの体を、手を、伸ばす


 そうして懸命に伸ばした手に──何かが触れた





「へーすけー!! いつまで寝てんだよ!」

「お前は三年寝太郎か平助!」




 突如聞こえた、自分を呼ぶ声に、ビクリと反応して瞼を上げる。
 開けた視界に飛び込んできたもの。──大好きな二人の相棒の顔。見慣れた屯所の天井。戦場とはかけ離れた、かつて送っていた穏やかな日常の風景。


「えっ‥? 何‥?どうして‥?」


 混乱している頭を整理する為にさらに頭を働かせようとすれば、余計に混乱は増すばかりだ。

──だって、俺は、

 不意に背中から腹にかけて痛みが貫いた気がして、腹の辺りをぎゅっと握り締めた。


「何、まだ寝ぼけてんの?」

「俺が一発気付けでお見舞いしてやろうか?」

「たはは!左之、お前の馬鹿力じゃ平助またおねんねするどころか余計バカになっちまう!」


 拍子抜けするくらい、それはあの幸せだった日々と同じ。

──夢。そうか、夢だったのかもしれない。

 腑に落ちない部分を無理やり拭って、俺は納得したフリをした。

 そんな俺の表情を覗き込んで、新八っつぁんは怪訝そうに口を開いた。


「おい平助、なに珍しく考え込んでんのさ」

「‥えっ、そんなことないよ、新八っつぁん」

「おーいおい!嘘つけ!眉間に皺が寄ってんぞー!」


 そう言って左之に額をぐりぐりと押される。
 痛い痛い、と涙目で抵抗すると、やっと左之は離してくれたけど、その代わりに何故か大笑いし始めた。


「平助、大仏さんみてぇ!」


 どうやら左之に額につけられた赤い跡が大仏を彷彿させたらしい。新八っつぁんも笑い出すもんだから、──堪えきれずに俺まで吹き出してしまった。

 俺はこの二人の笑顔に弱いんだ。


「あ、やっと笑ったな」





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