■ 企画 ■

□言葉より大切なもの
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「てぇへんだ、てぇへんだ〜っ!」


此処はグランドジパング。
何時もとは、ちょっぴり違ったお話──


「親分っ、てぇへんだぁ〜っ!!」


そう騒ぎ立てながら、町中を引っ掻き回しているこの男──捕方見習いのウソップである。

いつもの様に、一軒の飯処へと駆け込む。


「ぼうひはんへ、ふほっふ?」


ウソップの慌て振りにも動じず──と云うよりかは、但単に何も考えていないかも知れない──飯を頬張っているのは、ルフィ親分。
こんな為りでも一人前の捕方だと云うから、世の中不思議で仕方が無い。


「んぐ。まぁまぁ、飯でも食って落ち着けよ。サンジ、飯──」


ガッシーン!


「そーゆー台詞は、此処の付けを全部払ってから云うんだなっ!」


食事の代わりに差し出されたのは、刺身包丁だった。
勢い良く板場から飛んできた其れは、あわや親分を掠めると、そのまま壁に突き刺さる。


「そ、そんなに怒る事ねぇじゃねぇか、サンジ〜」


煙管を蒸かしたサンジと呼ばれたのは、この店の板前だった。
一流の腕を持ちながらも、一介の飯処なんぞに納まっているのは、此処の女将に惚れこんでいるからだとか。


「うるせぇ、クソゴムっ!てめぇの所為で、この店は赤字続きだっ!」


「それだけじゃねぇだろうが…」


店に来る美人の女性客に、無賃で奢っているのをウソップは知っている。
だが、此方を睨んできたサンジと目が合うと、二の句は継げなかった。


「そ、そうだ!んな事より聞いてくれよっ!実は、おナミの奴が──」


「おナミさんがどうかしたのかっ!」


愛する女将の名が出ると態度は一変する。
だが、それはウソップにとっては変わらない事だったのかも知れない。


「ぐ、ぐるじ…」


女将の身を案ずるが余り力が入り、サンジはウソップの襟を引っ掴んでいた。


「まさか、また道化一味に──!?」
 
  
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