「今日のデートはおあずけだね」

「また〜?もう嫌だよ、梅雨なんて」

「仕方ないじゃない。来週晴れたらにしよう」

「うん……」


つい最近から、雨が嫌いになった。理由はセドリックと外で過ごす予定が潰れるから。

セドリックは涼しい顔でまた今度また今度と繰り返すけれど、私は嫌だ。外の方が好きだし、雨より晴れの方が好き。


「セドリックは雨の方が好きみたいね」
振り返って私がいうと彼は二人掛けのソファに一人ゆったりと腰掛けていた。

「晴れも好きだよ」


またそうやって。

セドリックは全部好きだという。

「私のことも好き?」

「うん」

「ふーん」

素っ気なく返したくもなる。なにを聞いても返ってくるのは「好き」だけ。勉強も運動も両親も友達もさっきのように雨も晴れもみんな好きだと言う。私のことも好きだという。


彼にはパラメーターというヤツは存在しないんじゃないんだろうか。なんでも比べる人でなくて良かったが、これはこれで人が出来すぎだ。まぁその好きに嘘はないのだろうけど。事実セドリックは勉強も運動も出来て友達も多い。


私は彼の隣に深く腰を沈めた。途端に、彼が渡しの腰に手を回して抱き寄せる。
彼に触れるこの瞬間が好きだ。暖かい彼の声の振動が好きだ。私は彼のことが何より誰より好きなのに。


「小さいなぁ。肩が僕の半分しかないや」
「壊さないでね。脆いんだから」
ぎゅっと更に抱きしめられたのでそう言ったらセドリックは笑った。
彼の手はこんなに優しく私を扱ってくれているから本当は壊れるはずなんかない。なんだろう、私は彼に甘えたいのかな…。










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