book2

□:*:・雪の足跡・:*:
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―… 吐息がすっと昇って冬めく空溶けだした
   澄んだ空気に心は洗われてさかのぼる …―




「雪だね」

「雪かぁ…」


それはとある日の放課後。
仕事を終えて帰路に着こうと校舎を出た庸伽と健司は、辺り一面に広がった真白い雪景色を呆然と眺めていた。


「結構降ってるなぁ…」

「これは積もりそうだね」



とりあえずお互い傘をさして、並んで歩き出す。


「なんか懐かしいなぁ…雪って」

「うん?」

「学校帰りに雪降ってさ、庸伽くんてば傘ささないで、はしゃいでるの」

「それ何歳の時の話?」

「小学校かな」

「……覚えてない…」

「庸伽くんが大学受かった時も雪だったよね」

「……なんでその話を持ち出す…?」

「それは覚えてるんだ?窒息しかけたよね、ストーブつけて、部屋閉め切ってエッチして」

「うっさい!」




―… 立ち止まったり、回り道もしたけど
   一つ一つが大切な記憶
   今日のように
   いつの日も 君と共に… 
   
   降り出した雪が辺りを染めて
   僕らをそっと包み込んでゆくよ
   優しく  …―





「健司」

「うん?」

「傘、一緒に入っていい?」

「…うん」


自分の傘を閉じて、庸伽は隣の健司の傘へとさっと潜り込む。



「なに?今日は甘えんぼなんだね」

「‥離れて歩くと、寒いから」



―… 君が居たから今でも前を向いて進めるんだ
   彩る冬を歩いて心から そう思う …―




「ねぇ、庸伽くん」

「ん?」

「手つなご」

「どっちが甘えてんだか」

「あはは」




―… 歩道沿いには梢に咲く雪の花
   白いキャンバス落書きの路面
   冷たい手重ね合い温めあう
   
   振り返り見れば並ぶ足跡
   転んだ跡を眺め微笑みあう
   冬の日  …―






「わっ」

「なに?」

「足跡、俺達だけのしか残ってない」

「…綺麗だね」

「なんか絵みたい」



2人して振り返って
白い世界に佇む

2人が歩いた足跡は
黒いアスファルトを覗かせていて
真っ白い中に映える宝石にも見えた。





―… いつも手に手を取るように
   こうして確り 踏みしめ行こう

   降り積もる雪と白い足跡
   二人で描くように歩いていく
   いつまでも

   そっと寄り添うみたいに
   もう少しゆっくり
   一緒に帰ろう …― 




L'Arc-en-Ciel【『KISS』雪の足跡】より

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