シンアスのお話
□小ネタパラダイス
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幻水GOなシンアス
■兄として■
女王国。
この国は代々、女系の王族が国を統べる。
つまり、オレは第一王子だが王位継承権がない。
生まれた瞬間から国民を落胆させただけの王子。
次期女王になるのは俺の妹だ。
目に入れても痛くない、未来の女王。
その幼い女王に、婿選びを行うことが決まった。
「早過ぎるって」
思わず溜息が出る。
着替える手も止まる。婿選びのトーナメントを鑑賞するために着替えなくてはいけない正装だからだ。
「王族ならありえない年じゃないさ」
着替えを手伝ってくれていたアスランが、俺の独り言を察して答えた。
「そういうことじゃなくて、元老院の策略だろ!?」
オレはアスランを睨んで吐き捨てた。……アスランに当たっても仕方ないことはわかってる。
「それでも、いつかは行われることだ」
アスランはオレの睨みなど気にせず、オレの前で跪いたまま着替えを促してきた。淡々と装飾品を整えられる。
「……着替えたくない」
その綺麗な指先を見つめながら、オレは力なく呟いた。
「我儘はいけませんよ、王子」
たしなめるようにわざと恭しく身分を強調したアスランに、オレはカッとなって襟首を掴んだ。間近でその翡翠を睨む。
だが、向こうからさらに距離を縮められてしまった。
「――寂しいのは分かるが、俺がいるだろ?」
アスランの、やさしい微笑みとあたたかくやわらかい口付けに、オレは怒りを無くす。
残ったのは、寂しさとどこか悔しい想いだけだった。
「……オレが優勝者を殴っても止めんなよ」
「わかった、殴り終わってから止めてやる」
強く抱きしめたアスランは、笑って頷いた。
END
ALEXANDRITE EYES ひののき