至宝のシンアス
□【契約〜ハジマリ〜】
1ページ/16ページ
望みを聞いてそれを叶えれば過去にいける。時間を手に入れる事ができる。
だからそのために利用させてもらうよ。
【契約〜ハジマリ〜】
目を覚ましたその人は俺を見るなり泣き出した。
『そんな姿で……会いに来てくれたのか…?!』とか言ってるけど、残念ながら俺はそいつじゃないし、生きても死んでもないから返答の仕様もないんだけど。
けどこれを利用しない手は無い。
「そう、アナタの気持ちが強かったからカミサマが特別に、ね」
別にカミサマなんて信じちゃいないけど。
そして俺はこう続ける。
「アナタの言う事一つだけ叶えさせてくれるんだってさ」
微笑んだまま告げる。これで望みを聞いたら契約成立……
「なら、ずっと俺の側にいろっ!!俺が死ぬまでずっとっ!!!」
必死な感じが伝わってくる。強い思い。これなら完璧だ。ゲートもひらくはず。
「シヌまで、ね。契約成立」
契約成立と同時に砂の様だった姿に色としっかりとした形が創られる。
これは彼の記憶でまだ俺の物じゃないけど。今はこれで十分。
「っ!シンっ!!!」
………って………。
なんでこの人は俺に抱きついているんだろ……?
それだけこの記憶が大事だって事?
……まぁ。頂くまでは優しくしてやるか。それも一興だよな。
そう思い俺は彼の背中に腕を回して抱きしめてあけた。
すると彼はまた激しく泣き出すものだから、なんか俺が泣かしたみたいで居心地が悪い…………まぁ俺が泣かしたんだけど……。
そう言えば契約は死ぬまで一緒だったっけ…?…契約果たすために人殺しなんてしたくないから、何かのゲームでゲームオーバーになってもらえばいいか。
なんてことを考えながら、腕の中で泣いている彼を見て、
あぁ、まだこの人の名前も知らないや、とぼんやり思った。