至宝のシンアス
□サプライズ・プレゼント
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*サプライズ・プレゼント*
薄く切った新鮮な桃を並べて、ケーキが完成した。
「初めてにしては、うまく作れましたね」
「そうだな」
アスランは、じっと桃を見つめる。
「食べちゃダメですよ。プレゼントなんですから」
「わかってるよ」
クラッカーを手に、明かりを消した。テーブルの下に隠れる。
テーブルの上には、二人で作った桃のケーキ。
二人の仲を応援してくれている、大切な人への、誕生日プレゼント。
「喜んでくれるといいな」
「そうですね」
「びっくりしてくれるかな」
「きっと、びっくりしてくれますよ」
「ドキドキするな」
部屋に入ってきたら、クラッカーを鳴らして、明かりをつける。
そして、サプライズ・パーティーを始める計画だった。
暗闇の中、二人で待つ。寄り添って隠れているため、体が密着している。シンは、クラッカーを持っていない方の手で、アスランの手を握った。
「アスランさん……あの、俺……」
「ん?どうした?」
シンの手が、少し汗ばんでいる。緊張しているのかなと思い、アスランは、きゅっと、握り返す。
「ドキドキじゃなくて、ムラムラしてきました」
「ムラムラするな!」
「だって暗いから!」
そんな場合じゃないだろ!
怒鳴ろうとしたら、シンの息が顔にかかって、アスランは身をかたくした。
顔が近い。
唇が重なる。思いがけない濃厚なキスに、アスランは翻弄された。
「つまみぐい、しましたね」
キスの後で、シンは、くすりと笑った。アスランの舌は、桃の味がした。どうやら、ケーキを作っている最中に、こっそり食べていたらしい。
「お前は、俺をつまみぐいしたな」
「本格的に、食べちゃってもいいですか」
「え……っ」
それは、まずいだろ。
戸惑うアスラン。その時、アスランの携帯が鳴った。メールが来たようだ。アスランは、内容を確認する。
「計画変更。俺達が、向こうに行かなくちゃいけないらしい。ケーキとクラッカーを持って行くぞ」
「いいところだったのに……。後で、続きしましょうね」
シンはアスランの頬にキスをした。アスランは無言で、キスを返す。OKの合図。
シンは機嫌よく、テーブルの下から出た。
さあ、大切な人のところに、今から行こう。
そして、二人で、告げよう。
「お誕生日、おめでとうございます」と。
END
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