至宝のシンアス

□サプライズ・プレゼント
1ページ/1ページ




*サプライズ・プレゼント*


 薄く切った新鮮な桃を並べて、ケーキが完成した。
「初めてにしては、うまく作れましたね」
「そうだな」
 アスランは、じっと桃を見つめる。
「食べちゃダメですよ。プレゼントなんですから」
「わかってるよ」

 クラッカーを手に、明かりを消した。テーブルの下に隠れる。
 テーブルの上には、二人で作った桃のケーキ。
 二人の仲を応援してくれている、大切な人への、誕生日プレゼント。
「喜んでくれるといいな」
「そうですね」
「びっくりしてくれるかな」
「きっと、びっくりしてくれますよ」
「ドキドキするな」
 部屋に入ってきたら、クラッカーを鳴らして、明かりをつける。
 そして、サプライズ・パーティーを始める計画だった。

 暗闇の中、二人で待つ。寄り添って隠れているため、体が密着している。シンは、クラッカーを持っていない方の手で、アスランの手を握った。
「アスランさん……あの、俺……」
「ん?どうした?」
 シンの手が、少し汗ばんでいる。緊張しているのかなと思い、アスランは、きゅっと、握り返す。

「ドキドキじゃなくて、ムラムラしてきました」
「ムラムラするな!」
「だって暗いから!」

 そんな場合じゃないだろ!
 怒鳴ろうとしたら、シンの息が顔にかかって、アスランは身をかたくした。
 顔が近い。
 
 唇が重なる。思いがけない濃厚なキスに、アスランは翻弄された。

「つまみぐい、しましたね」
 キスの後で、シンは、くすりと笑った。アスランの舌は、桃の味がした。どうやら、ケーキを作っている最中に、こっそり食べていたらしい。

「お前は、俺をつまみぐいしたな」
「本格的に、食べちゃってもいいですか」
「え……っ」
 それは、まずいだろ。
 戸惑うアスラン。その時、アスランの携帯が鳴った。メールが来たようだ。アスランは、内容を確認する。

「計画変更。俺達が、向こうに行かなくちゃいけないらしい。ケーキとクラッカーを持って行くぞ」
「いいところだったのに……。後で、続きしましょうね」

 シンはアスランの頬にキスをした。アスランは無言で、キスを返す。OKの合図。
 シンは機嫌よく、テーブルの下から出た。


 さあ、大切な人のところに、今から行こう。
 そして、二人で、告げよう。

「お誕生日、おめでとうございます」と。




 END




サイト名:宵の光明
管理人:まり様


※転写転載厳禁


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ